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てっしゅう
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「夢の中へ」 第十一話

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時代は秀吉が国を治めるように変わり始めていた。
細かいことは起っても大きな戦はこの国から無くなっていた。
藤子も成人して夫を迎えるようになった。仲が良すぎるのかまどかには二人目が出来ないでいた。

天正十四年(1586年)9月に秀吉は豊臣姓を賜り暮に太政大臣に任命され、天下人となった。
元号が文禄に変わる文禄元年(1592年)東北から九州まで全国を平定した。

まどかは37歳になっていた。そして藤子は21歳になっていた。藤次郎は40歳(数え41)で男の前厄を迎えようとしていた。

嫁ぎ先から大きなお腹をして藤子は実家へ戻って来ていた。まどかは無事藤子が出産してくれることを願っていた。
いつしか自分を迎えに来るだろうと考えていた夢に立った武将のことなどすっかり忘れてしまっていた。

臨月を迎えた藤子は降りしきる大雨の中朝方から産気付き、産婆とまどかが見守る中苦しみながらまだ出てこない赤子に息も絶え絶えになっていた。

「藤子頑張るのよ!もう少しだから・・・」

母親の悲痛な叫びも空しく藤子は苦しみながら気を失い、必死のことで産婆が取り上げて命を取り留めた。
小さな泣き声しか出さない女の子だった。

「藤子、良く頑張ったね。ゆっくり休むといいよ。あとは大丈夫だから」

「は・は・う・え・・・はい・・・」

藤子はそういうのが精一杯だった。そして日が昇り始めた時刻になっても目を覚ますことはなかった。

「まどかさま、このままでは赤ん坊とも命が消えまする。乳母を探さねばいけません・・・心当たりはござせんか?」

産婆にそういわれてまどかは事の重大さにどうして良いのか解らなくなっていた。夫は見守るだけで何も出来ないでいた。

少し白湯を飲ませて、おとなしくしている赤子はこのまま消え行く運命にあるのかと涙が止まらなくなっていた。