しぼりだした素直
しぼりだした素直
僕と彼女は暇さえあれば、二人で茶を嗜む。別に、優雅な趣味があるわけでも、ハイソな出自というわけでもない。いつの間にかそういうふうに習慣づいてしまっていたのだ。
「レポートは終わったの?」
彼女は茶会の時は必ずジャスミンティーを出してくれる。強い、独特な香りが安物のカップから漂う。
「徹夜でなんとか。ところで、」
口をつけて、香りと一緒にお茶を流し込む。やっぱり何度飲んでも、この強い香りには慣れない。だからちびちびと、他愛もないことを口にしながら減らしていく。こういうのを『お茶を濁す』というのだろうか。
穏やかに笑う彼女は、カップを傾け聞き役に徹してくれている。普段からおしゃべりというわけではない彼女は、いつもそんなふうにしている。
「そうなんだ」
彼女が相槌を打てば、僕は首肯してお茶を飲む。そうすると、沈黙がやってくる。
お茶請けのバタークッキーに手を伸ばす。香りの強いお茶にこれはふさわしくないような気もするけど、僕はむしろお茶の風味を薄らいでくれるので好みだ。
「お代わりは?」
空のカップを掲げて見せる彼女。ジャスミンの花の沈んだポットを見つめると、どうもあと一人分で終いのようだ。
「僕はいいよ」
まだ半分は残っているそれを、ゆっくり傾ける。この分だと、彼女が飲み干すころには自分もカップを空けられるだろう。
「そう、じゃあ私がもらうね」
いつものことだけど、彼女は意に介した風もなく残りのお茶をカップに注ぐ。僕が一杯しか飲まないことを彼女は知っているし、だから彼女が準備するのは三杯分だということも僕は知っている。
僕と彼女は暇さえあれば、二人で茶を嗜む。別に、優雅な趣味があるわけでも、ハイソな出自というわけでもない。いつの間にかそういうふうに習慣づいてしまっていたのだ。
「レポートは終わったの?」
彼女は茶会の時は必ずジャスミンティーを出してくれる。強い、独特な香りが安物のカップから漂う。
「徹夜でなんとか。ところで、」
口をつけて、香りと一緒にお茶を流し込む。やっぱり何度飲んでも、この強い香りには慣れない。だからちびちびと、他愛もないことを口にしながら減らしていく。こういうのを『お茶を濁す』というのだろうか。
穏やかに笑う彼女は、カップを傾け聞き役に徹してくれている。普段からおしゃべりというわけではない彼女は、いつもそんなふうにしている。
「そうなんだ」
彼女が相槌を打てば、僕は首肯してお茶を飲む。そうすると、沈黙がやってくる。
お茶請けのバタークッキーに手を伸ばす。香りの強いお茶にこれはふさわしくないような気もするけど、僕はむしろお茶の風味を薄らいでくれるので好みだ。
「お代わりは?」
空のカップを掲げて見せる彼女。ジャスミンの花の沈んだポットを見つめると、どうもあと一人分で終いのようだ。
「僕はいいよ」
まだ半分は残っているそれを、ゆっくり傾ける。この分だと、彼女が飲み干すころには自分もカップを空けられるだろう。
「そう、じゃあ私がもらうね」
いつものことだけど、彼女は意に介した風もなく残りのお茶をカップに注ぐ。僕が一杯しか飲まないことを彼女は知っているし、だから彼女が準備するのは三杯分だということも僕は知っている。