困った時のイエス様
援助交際サイトの女子高生
峰蝶子がこんなことを言った。
「ケータイ見て、この娘何とかしてあげたいと感じたのだけど」
蝶子が言うのには、高校3年生で大学の入学金が欲しいそうだ。期日は後5日しか残っていない。『私の体100万円で買って下さい。1年契約』と書き込みがあったそうだ。悪い奴に騙されそうだと蝶子は言った。
入学金を納めなければ、いくら合格したとはいえ大学で勉強はできない。
切羽詰まってのことだろう。しかし、高校生ではローンは組めない。親が進学には反対しているのかも知れない。
高は蝶子に連絡をとる様に頼んだ。
「学校は2月は休みだそうです。直ぐに来て相談したいそうです」
「何時でもいい」
「そのように連絡入れます」
1時間後に高校生が来た。今どきの高校生にしては珍しく、制服を着て来た。それにスカート丈も膝から10センチほど上である。まるで面接試験を受けに来た感じであった。
とても蝶子が言った書き込みをした高校生には思えなかった。
「ご両親は進学に反対ですか」
「はい。自分の力で行けるのだったらいいと言いました。兄の学費だけで私まではお金がないそうです。入学金が何とかなれば、育英資金とかアルバイトで頑張れると思います」
「国立ではないですね」
「センター試験でミスってしまいました」
「あしながおじさんになりましょう」
「本当ですか」
「芸術学科の絵画科が気に入りましたからね。今度絵を見せてください」
「嬉しい嬉しい」
大島麗は涙を流していた。
100万円は大金であるが、ここに有る、たった1枚の絵の値段と同じでもある。
高は、ミュウシャの「朝の目覚め」をコレクターに手放そうと考えていた。
「振り込み用紙を持ってきましたね。一緒に行って振り込んできましょう」
「一生忘れません」
「このお金は気にしないでいいですよ。卒業したらあなたの絵を1枚下さいね。ここで売れるような絵をですよ。そう10万円くらいで売れたらいいな」
「勉強します。がんばります」