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母から子へ、語り継ぎたい本~偽物ソフトクリームにはご用心~

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長い夏休みも終わり、二学期が始まった。夏休みも終わりとなると、小中学生のお子さんをお持ちのご家庭では、宿題の総仕上げ、追い込みに追われることだろう。我が家は何とか私が早くしなさい! とせき立ててきたので、小学生3人は何とか早い時期に終わった。
 夏休みで子どもたちが頭を悩ませるのが読書感想文。そのことで、私には忘れられない一冊がある。今はもう中三となった長女がまだ小学一年の頃の夏休みのときである。読書感想文を書くためにと、推薦図書を買った。まだ今とは別人のように素直で可愛かった娘は、真面目に読んで、感想を書いた。
 そして、事件? はその後で起きた。娘を連れて外出した際、お菓子屋さんだったか、コンビニだったか忘れたが、店の前に作り物のでっかいソフトクリームが置いてあった。ウチの店ではソフト売ってますよという宣伝代わりに、お店の前に置いてある大きな偽物のソフトクリームである。
 で、娘がいなくなったので、慌てて探したところ、な、何と娘は店頭のソフトクリームをなめていたのだ。えっ、一年生にもなって、馬鹿じゃないの。。。なんて言わないで欲しい。
 実は、これには深い理由があった。娘に読ませた感想文用の本のタイトルは〝このはのおかね、つかえます〟だった。ぽつんとある小さなソフトクリーム屋さんをある月夜、狸のお母さんが訪ねる。もちろん、人間に化けて。でも、ホンモノのお金がないので、木の葉を化け術でお金に換えて使う。最初は騙されていたソフトクリーム屋のおじいさんだが、途中で気づいたので、おじいさんが〝このはのおかねつかえません〟という看板を店の前に出したのだ。
  それを見た狸のお母さんは、ついに正体がバレてしまったことを知り、ソフトクリームを買いに行けなくなった。でも、子狸はまた食べたいようと言うので、お店が閉まった後、子どもを連れて行き、店の前に置いてある宣伝用の大きな作り物のソフトクリームをホンモノだと思ってなめてごらん、と、言い聞かせたのである。お母さん得意の化け術で、一瞬、ソフトクリームがホンモノのよう味がした。その後、おじいさんは入院することになってしまい、狸の子どもはおじいさんに早く元気になってくださいと、木の葉に書いて手紙を出す。
 おじいさんは、その木の葉が例の偽金の木の葉と同じだったので、手紙を書いたのが狸の子どもだと判った。退院して元気になったおじいさん、今度は店の前に〝このはのかねつかえます〟という看板をかけかえたのだ。
  ウチの娘はこの話を思い出したのだろうと思う。恐らく、月夜に子狸が作り物のソフトをなめているシーンを思い出したに違いない。その時、もちろん、私は娘を止めたけれど、何ともほほえましい思いになったものだ。
 今ではその頃の面影はカケラほども残っていないほど成長したが、その店の前のソフトクリームは変わらず元の場所にある。きっと娘が大人になっても、そのソフトをみるたびに思い出すことでだろう。
 この話はオススメだ。狸の親子とおじいさんの心の交流がほのぼのと描かれている。他人に対する優しさとか思いやりを失いがちな今頃の子どもに、優しさとはどういうものなのかを教えてあげることのできる本だと思う。
 夏休みは終わってしまったが、冬休みの宿題用にはもってこいかもしれない。