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プラムズ・フィールド 〜黒衣の癒師〜 【第七章】

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 男は片足を鉄板に乗せると、もう片方の足で崖を蹴り、天空の道を滑っていきました。
 しばらくして、対岸の崖からマーロウさんの声が小さく聞こえてきました。
「あと一時間すると、谷に霧がかかってしばらく通れなくなります! さぁ、勇気を出して!」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
 泣きながら謝る私は、いつしか地元の子供たちに遠巻きに囲まれていました。
 子供たちは私を笑っています。
 ところが一人だけ、真顔の少女がいました。彼女は私に近寄ってきて、言いました。
「マーロウ兄ちゃの母ちゃ、ほんとに具合わるいの。ええと、ながくてはんのし? 半年? っていわれたって」
 私の心の底で、カチリと何か切り替わる音がしました。
 マーロウさんのお手本通り、鉄板に左足を乗せ、右足で地を蹴っ……。
 足が滑った!?
 蹴り足を足場に戻すきっかけを失い、前のめりになった私はもう、生きた心地がしませんでした。
「ひゃあああああああ!!」
 宙に浮いた右足の靴が脱げて、谷底へ落ちていきました。
「ひっ!? た、高い!」
「下を見るな! 僕を見て!」
 私は声がするほうに目をやりました。
 マーロウさんや他の村人たちが、藁の化け物のようなものを引きずっています。
 私はハッとしました。そういえば降り方を習っていません。対岸の崖とロープを固定する鉄塔はもうすぐそこです。
「どうしよう! どうしよう!」
「手を放して、左へ飛べ!」
 そこには藁山が見えます。
「こわい! こわい!」
「放さなきゃ死ぬぞ!」
 私は懸垂棒から手を放すと同時に、残っていた左足で鉄板を蹴りました。
 ばりばり! もしゃ!
 気づくと私は、藁山の頂に大の字でうつ伏せていました。
 マーロウさんが駆けつけてきました。
「怪我は?」
「大丈夫です。すみません、皆さんにご迷惑をかけてしまって……」
「ご心配なく。今のが正しい降り方ですから」
 壊したと思っていたスライダーは、鉄塔の真ん中に空いた隙間にぴたりと収まっていました。
 ほっとした私は、そこで気を失ってしまいました。