詩集 風の刻印
放浪する民族
その腕は天を仰ぎながら動きを止めた
それでもなお、鮮明な形を保ち、黒い影となり
その叫びを初夏の青空に響かせた
二千年の長岐にわたりこの苦悩は続いてきた
我らが約束の地にたどり着くまで
それは罪という名の暴虐で行われるのだろう
迫害はいつ終わりになるのかも分からず
我らは一握りの希望を約束の地に託した
今度こそは、と
その腫れ上がった足を引きずりながら
非情なる雪の山を越える間にも
幾千の同胞が異郷の黒い土に葬られたろう
それでも我らがパレスチナは拒むのか
聖なるシナイに分かたれた運命の終わりを告げることを
嘆かわしいことに、かの地は異教の香を焚いていた
仲介者は争う我らに尻尾を巻いて逃げおおせた
勝者は聖地を二つに引き裂いて我らに与えた
異教徒を追い出し我らは害した
聖なる地、約束の大地カナーンは我らにこそ約束された地
それだけを糧に苦難を耐えてきたというのに
我らは、われらの力だけで守り通さなければならない
この地を、この教えを
「希望」と言う名の旋律に乗せて
約束された聖なる地は血による洗礼を許すだろうか
いくつもの血塗られた歴史の終焉を受け容れるだろうか
さあ、罵るがいい
いわれなき殺戮を受けたわれらが
今度は加害者に回ったことを
大国の掌の上で踊らされた二つの民族が
陰惨な歴史を繰り返そうとしていることを
聖なるイェルサレムは嘆くだろう
そして、暗黙のもとにこう呟くだろう
“あなたは、殺してはならない”