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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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詩集 風の刻印

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風の刻印

磨かれた岩肌は反射する光の中に幾億年の記憶を宿す
稜線に捧げられた祈りは遠い願いの中に込められた
懐かしい母胎の記憶の中に眠る

命重きと
山に願いて
痩せた大地に刻む言伝

汝(なれ)永遠にあれと
唇を噛み
富めるかの地を訪ねさまよう

限りある存在に刻まれた永遠の記憶は
何も言わず
何も示さず

ただその記憶を刻みつける

汝(なんじ)忘れることなかれ
刻まれた格言もいずれは消える
汝恐れることなかれ
刃のような岩肌もいずれは消える

黒き雨に埋もれた営みの記憶は灰の鋳型にとどまり
染みゆく血の轍は鉄の車輪の文字を描く
かの地を呼んだ美しき名は消えうせ
削り作り上げる岩肌の
積み上げたる石組みの粗い角を洗うがごとく
ここに見えし風の刻印

移り変わりし星の図を
見る者変われば行く道変わり
流れゆくべき空の雲
ゆく風変われば形も変わる

谷間をつなぐ翼のごとく
懐かしい響きが風を呼ぶ
滝の霧に微笑みし
赤き花を揺らして撫でる





命込めて作りし息の
振動の奏で
風の音

古の記憶宿りし森の
奥に生まれる風の刻印

生み出すものが奏でる音に
光をたたえた木立が揺れる

壊れるものが叫ぶ声音に
過去を抱えた柱が唸る

風の記憶は刻印を
刻む形は記憶をとどめよ

作品名:詩集 風の刻印 作家名:瑠璃 深月