詩集 風の刻印
伏龍の遺蹟
東南から吹く風は勝利を告げた
近い慟哭と遠い涙に彩られて
重苦しくはためく計略の証は
鮮明な記録を乱世の墓標に刻み込んだ
紅に輝く星は絶望と力を喰らい尽くし
凶星はさらに輝きを増すだろう
われらが勝利を繰り返すかぎり
敗北が常にその背を追いかけているかぎり
命あればと、複雑に編まれた脆い綱を渡ってきた
そのなかで、思惑の重責に押し戻された風が
幾度となくわれらの足にまとわりついた
重い足取り、戦乱への疲労
そのすべてが凶星を呼んだ
悠久の流れ、太古よりの記憶
その水面に映し出される幻は紅に染まり
戦乱に疲弊した大地が呑み込む屍
赤壁での勝利が大地を分かつ
鼎立した三の国は打算のみを信じ
交わりを知らない運命の流れは
常に逆流と克服を拒んでいた
何かに怯えきっているかのように
何かが崩れ去っていくのを
必死で抑えているかのように
東南の風は吹いた
騙し、だまされる世は自らを滅亡の途につかせ
光明は太陽を照らすために策を練るだろう
中秋の平原
痩せた大地は肥沃に変わる
国は宰相に信を仰ぎ
宰相は冷えた陣屋で筆を走らす
その身体に未来なくとも
その理想の未来のために
乱世はすべての祈りの終わりを告げた
五丈原に月が昇る
凶星は、落ちた