詩集 風の刻印
青い果実
日入りは遠い稜線に
夕暮れの笛は澄んだ空に
誘われるは、はるかな家路
かの橋よ
栗毛の乙女はそこに待ち
かの川よ
青い瞳は流れを追った
思い出は緑なす丘に佇み
新緑の春に蒼穹を仰いだ
今はただ静かに待ち続ける
晴れやかな音楽が流れるのを
小川にかかる小さな橋に
石畳の道をはずれた先に
青い果実をそのままかじる
まだ酸い時を
かの川よ
かの橋よ
青い果実は熟したか
枯れることなきその枝は
いずこへ水を送るのか
青い果実をそのままかじる
まだ酸い時を
かみしめる
閉じたままの口で何度も何度も
蒼い時を反芻しながら
深紅に染まる夕暮れの空に
甘いときが満ちるまで