詩集 風の刻印
強がり戦士
勝った
今日一日に勝った
迫りくる死への恐怖と悪魔の微笑みに勝った
脅かすものに勝った
自由と正義を抱えて勝った
家族への愛を抱き
生きるために
国の使いになった
それだけが
今日一日、私をここに繋ぎとめた
切り取られた首も
コーランの文句に踏み潰された自由も
吹き飛ばされた半身を求め叫ぶ戦友の声も
夫を失いベッドに顔を伏せる女の涙も
子を求め軍旗に縋り付く哀れな母の細い腕も
全てを抱いて
その重い棺を抱えて
飛行機は飛ぶ
鋭い羽で空を切り裂き
重い胴体を大気に乗せて
故郷へ飛ぶ
明日は妻に電話をできるだろうか
遺書は擦り切れてもう読めない
明日書き直そう
今日寝たら目覚めるだろうか
そういえば体が臭い
朝起きたらシャワーを浴びよう
そしてこう叫ぼう
俺は怖くなんかないぞ!