小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Shiny Blade

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

 美奈は警戒しながらも冥と憐の方を向いた。
「あんたを殺すのは簡単だけどそれじゃつまんないし。こいつの命を引き換えに見逃してもいいかなー……って思いついちゃったのよね」
「なにっ!?」
「どう? 悪い話じゃないでしょ? しょせんこいつはなーんの力も持ってない、ただの人間だもん」
 ただの人間。憐の心に重くのしかかる言葉。今度こそ美奈ちゃんが本当にピンチなのに、肝心なときに何もできない。
 悔しい。もどかしい。
 なんでもいい。力があれば……。
「私の気が変わらないうちに早く尻尾巻いて逃げちゃいなさいよ。ただし、その瞬間に……」
 またもや憐の首根っこを絞める冥。
「ぐっ……」
「殺す」
 軽薄な声から一転、低く押し殺したような声。本気だ。やると言ったらやるんだ。素人なりに憐はそう感じる。
「ふざけるな」
 それに負けじと美奈も静かに怒る。
「私は最後まで私の力だけで貴様らと戦う。そいつは元より無関係だ」
「あんたが死んだ後こいつをどうするか、あたしの自由なのに?」
「私は死なない」
「はっ、強がっちゃって」
 手の力を緩めながら冥はそう吐き捨てる。
「多少の犠牲を出す覚悟もない、無駄な抵抗をすることで自己満にひたる……弱いのよ、あんたは」
「弱いだと……私が?」
「今さら気づいても遅いけどね」
「私が弱い……?」
 真に受けてしまったのだろうか、美奈の顔色は沈み込む。
 一方、憐はとある違和感を覚えていた。
「そう、かもしれない……」
「違う!」
 だから、そう叫んだ。
「美奈ちゃんはあんたなんかより、強い!」
 精一杯声を張り上げて。
「強い? どこが?」
「美奈ちゃんは優しいから……誰にも苦しい思いさせたくないって思って、一人で戦ってた。つらいわけないのに、たった一人で」
 少しでも美奈に触れようとしたから、言えること。
「だから、美奈ちゃんがあんたなんかより弱いなんてこと、あるわけない! 苦しいこと、悲しいこと、そういうの耐えることから逃げ出したあんたなんかに!」
 なんだろう、言葉を紡ぐたびに憐の心が疼く。燃える。熱い。
「へー。……で、それでどうするの、この状況で」
「けどね。美奈ちゃんもちょっとは反省しないと」
「私は……」
 美奈が憐の言葉を聞いてどう思ったか、わからない。
 どう思っても構わない、けど。
「本当につらいときは、誰かに頼ってもいいんだよ?」
 憐の胸が光る。あまりにまぶしくて憐自身の目がくらむ。
 熱い。焼けるように熱い。苦しい。でもそれでいて怖くはない。
 締め付けられていた手と足が楽になっていく。縄が引きちぎれていく感触が伝わってくる。
「うそっ……このエネルギーは!」
 冥はうろたえる。まるで光に押されるかのようにたどたどしく後ずさる。
 憐を拘束するものは、もうない。
「優しい心をわからない人達……消えろーっ!」
 光が広がっていく。冥も有象無象の化物はそれに押され、はじけ飛ぶ。
 美奈だけはその光に包まれ、その身に負った傷が癒えていった。
「こんな……これは……」
 美奈自身がそれに驚く。
 その光がやんだとき、もう辺りには憐と美奈と、倒れこんだ冥しかいなかった。
「く、くそっ……」
 冥は地に両手をつきながら立ち上がる。
「あんたの顔、覚えたから」
 そう言い残しただけで、夜の闇の彼方へと消えていった。
「やった……あ……」
 憐は膝をついて、そして倒れる。
「大丈夫かっ!」
 慌てて駆け寄る美奈。
「えへへ、あんまり大丈夫じゃないかも。けど」
 上から憐を覗きこんだ美奈に、憐は右手を突き出す。
 その手がぼうっと光り、その光が鋭い剣となる。
「これ、美奈ちゃんのと同じかな」
「……っ」
 美奈は息をつまらせた後すぐに、
「すまない。私のせいでこんな力を……」
「美奈ちゃんのおかげ、って思っちゃダメかな?」
「とにかく、あまり喋るな」
 美奈は憐に肩を貸して立たせる。
 憐はよろけつつそれに応じた。さっきの反動だろうか、体に力が入らない。
「ね、美奈ちゃん」
「なんだ」
 なんだか、眠い。とても眠い。
 それでもこの一言は。
「私、美奈ちゃんの友達になっていい、かな……」
 まぶたが重くなり、そして、閉じられた。

 朝。昨日に引き続き、文句のつけようもないくらいのいい天気。
 憐は浮かれ気分で通学路を歩きながら、その後ろ姿を探して、見つけた。
「おっはよー、美奈ちゃん!」
「な、うわあっ!」
 満面の笑みでその背後から思いっきり飛びついてみる。
 美奈といえどその不意打ちには耐え切れない。
「えっへへ〜元気? もう平気?」
「お前こそ、死ぬほど元気だな……」
 だって、とても嬉しいことがあったんだから。憐はそう思う。
 疲れなんてなんのその、だ。
「え、いつの間にそんなっ?」
 近くに居た真子はあぜんとしっぱなしだ。引いてる。ドン引きだ。
「私達もう友達だもん。ねっ?」
 その体にぐるりと手を回して、憐は聞く。
「苦しい、ほどけ」
「え、もうちょっと」
「……やっぱり絶交だ」
「そんなこと言わないでよ〜」
 うりうりっ、と腕を揺らしてみる憐。ウザいかな。でもやめない。
 そして、ちょっとヒソヒソ声にしてこう言う。
「美奈ちゃんと一緒なら安心できるもん……強いから」
「ああ、私はお前と戦う。絶対に負けない」
 太陽の光が差して、二人を明るく照らした。
作品名:Shiny Blade 作家名:てっく