プラムズ・フィールド 〜黒衣の癒師〜 【第三章(前)】
私も自分に問いたい気分でした。なぜか体が反応してしまったのです。
あああ、口も勝手に動いて……。
「私はエルダーの癒師プラム。船医の代わりに、私を連れていけばいい」
「癒師だと? 祈りで病気が治んなら、世話ねぇぜ」
「私を連れていきなさい」
ナイフを持つ手に、凍りつくような錯覚をおぼえました。
すると、相手の顔も真っ青に……。
頭領は掠れた声で言いました。
「い、いいだろう。ついて来な」
二人が通路を行くと、人々は固唾をのんでそれを見守りました。
出口のそばにいたダガーさんが、私にトランクを返す瞬間、小声で言いました。
「忠告を忘れたのか? あんたが殺されちまったら……」
「彼らに私は殺せません」
「なぜわかる?」
それには答えず、私は微笑みを返しました。
「オピアムでの起業、がんばってくださいね」
ベスト男の後について船室を出ると、左舷の渡し板を歩き、頭領の帆船『バーベイン号』に乗りこみました。
出発を待っていた海賊たちが、いやらしい目つきで笑っています。
頭領は男たちを見渡して言いました。
「見た目で判断すると痛い目にあうぜ。この先生はな、俺の拳法をかわした、世界で初の女だ」
男たちは笑顔のまま固まると、逃げるようにして自分の仕事へ戻っていきました。
もう一度やれと言われてもきっとできないでしょう。
あのときは、自分のようで、自分ではなかった……。
こうして私は、海賊と共にヘイゼル諸島へ渡ることになりました。
作品名:プラムズ・フィールド 〜黒衣の癒師〜 【第三章(前)】 作家名:あずまや