夢うさぎ
「ゆかちゃん、今日はお月様のためにお団子を作ってくれてありがとう。お月様からプレゼントがあるの。これからおばあちゃんのところへいきましょう」
うさぽんぽんが言いました。
「え? だって病院は遠いのよ」
「いいから、いいから」
うさぽんぽんはかまわず、ゆかの手を取りました。すると、ゆかの体もふんわり宙に浮かんで、ベランダの外へと飛び出したのです。
「わあ、わたし、空を飛んでる」
ゆかはなんだかうれしくなりました。ゆっくりと空を飛んで、おばあちゃんの入院している病院までやってきました。
「さあ、中へ入りましょう」
うさぽんぽんが言うと、不思議なことに、ゆかの体は窓ガラスをすうっと抜けて、おばあちゃんのそばに行くことができたのです。
「これをおばあちゃんの胸にのせて」
うさぽんぽんは小さな光の玉をゆかに渡しました。ゆかがおばあちゃんの胸にのせると、まるで吸い込まれるように、光はすうっと消えていきました。
ゆかは自分のベッドで目が覚めました。枕の側に、外した覚えのないうさぽんぽんがあります。ゆかはうさぽんぽんをもってベランダにでてみました。
すると、十五個お供えしたお団子が一個へっていたのです。
「お父さん、お団子食べた?」
起きたばかりのお父さんは、
「いや、知らないよ」
と言いました。
そこへお母さんから電話がきました。
「ゆか? おばあちゃん、気がついたわ」
「ほんと? じゃあお月様がねがいをかなえてくれたんだわ」
ゆかはそう言って、お団子を作ってお供えしたことや、今見たら一個減っていたことを話しました。
「そういえば、おばあちゃんたら、ゆかがお団子をもって来たっていうのよ」
「おばあちゃんね。光のお団子を食べたの」
「あら、ゆかまで何言ってるの」
「本当よ。私があげたの」
お母さんと話しながら、ゆかはうさぽんぽんにウインクをしました。