小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夢うさぎ

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
 ゆかの大事な「うさぽんぽん」は、おばあちゃんが毛糸で編んでくれたうさぎのマスコットです。丸い体に顔と耳がついていて、ゆかがスキップするたびに、ランドセルの横でぴょんぴょん飛び跳ねていました。
 明日は十五夜という日のこと。おばあちゃんが倒れて入院したという知らせがありました。一人暮らしなので、近所の人が電話をくれたのです。
 電車で二時間かかる場所です。様子を見に行った母さんは泊まることになったので、ゆかはお父さんと二人で十五夜を迎えました。
 ゆかは空地に行ってススキをとってきました。毎年、ゆかの家ではお母さんがおばあちゃんから教わったとおりにお団子を作り、秋の七草を飾って、お月見をしていたのです。
 いつか、ゆかもおばあちゃんから、十五夜の話を教えてもらったことがありました。
「昔は、十五夜の晩になると、子どもたちがこっそりお団子を取りに来たんだよ」
「ええ、それじゃあ、どろぼうみたい」
 ゆかが驚くと、おばあちゃんはわらっていいました。
「それはね。お月様が食べてくれたと言って、縁起がいいことなんだ。その時だけは、子どもたちはお月様のお使いなんだよ」
 もう、そんな行事はだれもしりません。
「お月様がお団子を食べてくれると、願い事がかなったり、いいことが起こるんだよ」
 おばあちゃんの笑顔を思い浮かべながら、ゆかはお団子を作りました。それからベランダに小さな机を出して、ススキといっしょに供えたのです。
 やがてきれいなまん丸な月が昇ってくると、ゆかは心を込めて言いました。
「お月様。どうかおばあちゃんの病気を治してください」
 その時です。急にあたりの電気が消えました。ゆかは停電だと思って部屋の中へ入ろうとしましたが、すぐ側にあるはずのガラス戸がありません。
「お父さん!」
 不安になって呼んでみましたが、なんの返事もありません。
 ゆかが困っていると、今度はやわらかな光がきらきらとゆかの周りをとりまき始めたのです。
「あら? どうしたのかしら」
 ゆかがびっくりしていると、月の中から小さな光が出て、だんだんゆかに近づいてきました。よく見るとそれはうさぽんぽんです。
「こんばんは。ゆかちゃん」
 かわいらしい声で話しかけてきました。
作品名:夢うさぎ 作家名:せき あゆみ