富裕層会議
最終会議 緊急事態
「預けたお金が一瞬にしてちゃらになってしまうなんて」
「畜生、金融屋と来たら、とんでもないことに投資しやがって。まあ、何とかなる私たちは世界中に資産がある。それに、今度なくなった金も、公的資金として税金で穴埋めして貰えば、損得なしで済む。潰すには大きすぎると口実を作ればいい」
「原発はどうなってしまうの?」
「放射能は撒き散らされたが、私たちのところまでは来ていない。賠償は税金や電気料金を値上げしてまかなう。電力会社は存続できる。放射能も大したことないと民衆には御用学者を使い安心させよう。とりあえず、どこも原子炉停止中だが、なあに、ほとぼりが冷めれば再稼働させる」
「ああ、よかった」
「おいおい、外がうるさいぞ」とタキシードを着た紳士が窓の外を見下ろして言った。
「なんだ、職をくれ! 税金の無駄遣いをするな! 戦争反対! 原発を止めよ! だと」
「もの凄い数の人だわ。警察も抑えられないほどの規模のデモ隊よ」
外の庭を埋め尽くすように、プラカードや幟を持った人々が群れをなしている。
「どうしてここが分かったのだ? 秘密の場所だぞ」
「どうやらツィッターとフェイスブックで広まったらしいわ」ダイヤのネックレスをつけた貴婦人がアイパッドを見て叫んだ。
すると、ドン、ドン、ドアを誰かが叩く音が。その音はひっきりなしに続く。そして、ドン、ドン、大きくなっている。叩くというより、体当たりしているような音だ。ドアには鍵がかけられている。常にそうだ。大事な秘密会議なのだから。
「警備を呼べ」
電話をかけたが、何の反応もない。
ついには、ガターンという音とともに、ドアが開いた。どっと数十もの人々が会議室になだれ込んできた。富裕層たちはシャンパングラスを手から落とし、慌てふためき逃げようとしたが、行き場がない。ついには、民衆に倒され、あしげにされた。それは、自らがあしげにしてきた者達からのお返しであった。
終わり