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光の中

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意を決して私は振り返った。
だが首の角度を四十度ほど回したに過ぎなく停止させられた。
私のほっぺに人の指の感覚がしたのである。めり込む指が私を怖がらせ、そして安心させた。
「……あ、や、安土味(やすどみ)くんっ!?」
居たのは取り敢えず幼馴染といっても過言ではないぐらいの付き合いで、引っ越し先の都道府県のことも四日で忘れてしまえた程どうでもよい旧友であった。
「ふっふふ。ちょっとなんだよ、そんなに目ん玉プルプルさせてさ。かつてのキャラに再会でき、うれしすぎて言葉がないか?」
ああもう、くそ!こんなに人を怖がらせておいてあまりにもひどい仕打ちだ。目の前の旧友の顔が昔のように、また変態のようにケロッとしている。
苗字が『安』で名前が『土味』なのでフルネームで呼んでしまった訳だが、こんな奴には『やすたろう』とか『やすいつちのあじ君』とでも呼べばよかったんだ。

あと少しずれていたら指が目に入っていたかもしれなかったよ。

「もうそれやめてよ」
安が繰り出してきた技は、私が中学の時によく流行っていた嫌がらせ的なものだった。
人の肩に人差し指だけを伸ばしたまま手を置き、名前を呼ぶ。そうするとなぜか人は、手が置かれた方に振り返る。そしてまんまと罠に引っかかるのだ。
「ふっふふ。それにしても懐かしいな。ちょうど僕は夏休みで、こっちに来てるんです。今日も学校だったんですか?」
「うん、私は部活。そっか、夏休みで来てたんだ。いつまでいるの?」
「今週末に戻ります」
「…あと四日か。早いなぁ。ねぇ、明日友達と遊ぶんでしょ?私も誘ってよ」
「はい――」

久しぶりの再会したふりの学生は、一度は同じ志を持ち、共に歩んだ仲間だった。合計三十四名の仲間は、今では三十名だ。分かれていった四名のうち一人が彼、安土味だ。場所は違えど、いつまでも心の中で繋がっていて、励まし合っている。
二人を眩しい光が包み込んでいく。二人の姿が見えなくなるくらいに。それは未来への希望だ。そうして、彼らは私たちには見えない、一つ上の舞台へ互いに上がっていく。
その光は私たちにとってトラックの光。だが、彼らにとっては、四色。
作品名:光の中 作家名:月下和吉