D.o.A. ep.34~43
仮にも大十術師の住まいならば、もっと荘厳で重厚な石造りの建築物を予想していたので、レーヤに到着を告げられても得心がいかなかった。
ひときわ大きな樹木の中間に設置された、簡素なログハウスに近いもの。
見た目はまるで、子供の夢見る秘密基地によく似ている。
出入り口までは一本の頼りなさげな木梯子が立てられているが、あれは大人が登っても、果たして平気な代物なのか。
この梯子を多用するのはレーヤだけであろうから、子供用サイズになっているのは当然ともいえた。
「私は…何とかいけそうだけど、ライはどうかしら…ティルバルトは無理じゃないの?」
リノンが梯子を見上げて不安そうな声をあげた。
「一人ずつ登れば平気だろ」
ライルは楽観的だ。いざとなれば樹をそのままのぼっていけばよいと思っている。
レーヤは梯子の横にたたずんだままだ。
訊ねれば、エメラルダから、大人だけで話をしたいので外で待っているように、と言い付かっているらしい。
リノンが、梯子への最初の挑戦者となった。
おっかなびっくりのぼってゆくと、見てくれに反する異様な安定感に息を呑む。
小屋までたどり着いて、彼女は両腕で大きく丸をつくり、安全を伝える。
「へえ、意外に頑丈なんだなあ」
ライルはしっかり体重を乗せてびくともしていない感覚に感心した。これならば、三人の体重でも支えられただろう。
最後にティルがのぼり終え、下にいるレーヤに手を上げて知らせた。
レーヤはつぶらな双眸でじっと見上げたあと、小さな手をこちらに向けて振って、アルと一緒に森の奥へ駆けて消えていった。
木の下から見ていて、子供の秘密基地のようだ、と印象を持ったが、こうして傍まで来ると、いっそうそれを強める。
全体的に小づくりなのである。
出入り口は、ティルなら多少屈まなくては入れないくらいだった。
ライルは深呼吸すると、そのドアを叩いた。しかし、返事はない。
留守のはずがないので、ただ扉を開けて出迎えるのが面倒なのか、はたまた寝ているのか。
しかし、レーヤという迎えを寄越しておきながら、いまさら面倒ということがあろうか。
念のためもう一度だけノックし、反応がないことを確かめると、恐る恐る取っ手を握って扉を押した。
作品名:D.o.A. ep.34~43 作家名:har