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D.o.A. ep.34~43

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Ep.35 地底




樹の幹にできた穴に飛び込む、という行為に要した勇気は、実はさほどでもなかった。
後悔したのは、飛び込んで数秒経ってからだった。

――――なんだこれは。

ライルは肌を粟立たせた。深い。どこまでも深いのだ。
せいぜい10メートル強ほどを覚悟していたのに、何一つ触れないまま、おそろしいまでの速度で落下していく。
まるで底なしのようだ。例え底があったとしても、もはやたたきつけられて即死はまぬがれない。それほどまでに、落ちている。
地上の光が届かない闇の中は、何もわからない。

リノンやティルはどうしただろう。自分を追って飛び込んだか。否、飛び込むしかあるまい。
レンネルバルトは告げた。ロノアは陥ちたと。そしてライルを、血眼でさがすだろう、と。
わけがわからなかった。なぜたったひとりを血眼でさがすのか。自分はあまりにも無知だった。
ただわかるのは、もう、ゆくところはなく、もう、どこにも戻れないということだけ。

あの、白いばけものの姿が、目に焼きついている。
まばゆい、いかずちのような光が、ロノアの大地をえぐりとっていく圧倒的な光景が忘れられない。
人々が、虫のようにつぶされる様が、心に刻みつけられている。
そして、それらに対して、何もできない、自らの無力も。

ロノア王国に、安穏と暮らせる平和な場所はなくなったのだ。
ならば。進むしかない。
道はわからずとも、前をむいて。


――――と、気をひきしめた直後、明らかな変化がおとずれた。
落下の速度が緩まっている。暗中、ライルの体が淡く発光する。なんだか気持ちが悪い。
落下は、ふわふわと浮いているような感じへと変わり、やがて足が何かに触れた。
触れた、というより、踏んだ。足踏みができる―――足場だ。
同時に、ライルの体を包んでいた不思議な光は消え、再び何も見えなくなった。

(底に…着いたのか?)
なにがなんだかわからないが、転落死という最悪な結果よりはずっといい。
すぐ後に少し離れた位置にティルらしき人影が降り立つのがわかった。
そして。
「うわ、そこどいて、どいてッ!」
頭上からひどく慌てた女の声がし、見上げると、リノンが、

「え…お、ちょ、まッ…!…ぐぷ」

ライルの顔をひざで踏んづけた。
そして重力が正常になったのか、リノンの体重が一挙にライルの顔へのしかかる。
しかもひざから入ったので、ライルの顔にそれがめりこみ、頭からぶったおれた。

―――その衝撃に、視界に星が散るのを見ながら、気を失った。







作品名:D.o.A. ep.34~43 作家名:har