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CROSS 第19話 『Visitor』

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第1章 価値無し



   第19話 『Visitor』

【時間軸】 … 異次元暦42733年 12月15日
【場所】 … 異次元空間
       ザフト艦



「……そのすぐあとに、プラントの……大日本帝国連邦大使館は閉鎖され……、オレたちは……その世界から出た」

 山口は、窓の無い小部屋にいた。自白剤を飲まされている彼は、目の前にいる2人の尋問官に向かって、弱々しく喋っている……。

「……なるほど。では、あなたたちCROSSは、先ほど、『ファ・ディール』という世界で何をしていましたか?」
「……『アーティファクト』の……回収だ」
「『アーティファクト』とはなんですか?」
「……強力な……魔力がこめられている……重要な物だ」
「……わかりました。今、私たちが聞きたいことは以上です、山口少佐」
アルファは満足げにそう言うと、コンピューター端末を閉じた。
「…………」
自白剤の効果が続いている山口は、ぼんやりとどこかを見ていた。
「コイツはどうするんだ?」
ベータが、山口の目の前で手を上下に振りながら言った。
「捕虜として連れて帰ります。まだ尋問しなくてはならないことが出てくるかもしれませんから」
「やれやれ、めんどくさいな」

   ビーーー!!! ビーーー!!!

 そのとき、艦の警報装置が鳴りだした……。

「なんだ?」
「敵と遭遇してしまったのでしょう」
アルファとベータはそう言うと、急いで小部屋から出ていった。



 小部屋に一人残された山口は、部屋のあちこちに視線を動かしている。まだ残っている自白剤のせいで、意識と視界が少しぼんやりしているようだ。その間抜けな姿は、まるでボケ老人のようで、ガリアたちなら笑い出すだろう。

 やがて、自白剤の効果が完全に消えると、視界と意識がはっきりとする。彼がまず考え始めたのは、どうやってここから脱出するかだった。
 とりあえず、彼は立ち上がってみた。両手の手首には手錠、両足の足首には足枷が装着されており、自由に行動することはできなかった。しかし、彼はあきらめることなく、両足で小さくジャンプする形で、廊下へのドアへ進んでいった。

「オイ、山口!!! ちょっと来い!!!」

 ドアまで1メートルぐらいのところでドアが開き、ベータが山口を呼んだ。彼は、ドアのすぐ近くにいた山口を見て、少しビックリしたが、すぐに気を取り戻した様子で、
「早く来い!!!」
そう怒鳴った。
「足枷があるから、うまく歩けないんだよ」
山口が文句を言うと、ベータは仕方がないという感じで、山口の両足の足首にあった足枷を外した。
「もう一人は?」
「ブリッジにいる。今から、おまえもそこに行くんだ」
ベータはそう言うと、山口の手錠の鎖を引っ張り、山口を誘導し始めた。
「痛いな」
山口がまた文句を言ったが、ベータは気にすることなく、山口を引っ張って歩く。歩くといっても、艦内は無重力のため、山口は風船のように引っ張られている形だった。
 艦内を移動中、警報ランプがついていたり、ザフト兵がせわしなく動いていたり、この艦は戦闘状態なのだと、山口は察知した。そして、同時に味方の艦船が相手ならば、捕虜交換を期待してもいい。