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かいかた・まさし
かいかた・まさし
novelistID. 37654
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北京2005

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 グレッグは、迫り来るように言う。グレッグは確信があった。彼女には、まだ新しい男はいない。きっと自分を避けるために嘘をついたのに違いない。嘘だと分かれば、自分と付き合わない理由がなくなる。
「ほら、そこにいるわ」
と紅玲が指差す。その方向に一人の男性がやって来た。髪の毛の黒い東洋人。背は一七〇センチぐらいだ。
「紅玲、君に話したいことがあって空港から戻ってきたんだ」
と雅夫は、紅玲を見つめながら言った。タクシーから降りて学院に入ったばかりだった。彼女がグレッグを睨んでいる姿から状況は一瞬で察することができた。彼女は、雅夫を見つめながらとても嬉しそうだ。雅夫は、確信が持てた。彼女が「好きな人」とは・・・
「この男か。中国人か?」
と雅夫にグレッグが訊く。
「日本人だ。あんたと同じで彼女の生徒だったんだ」
「何だって、日本人だと。君たちが一番嫌う国の人間じゃないか」
とグレッグ。荒げた口調で言った。
「国なんて関係ない。大事なのは二人の心だ」
 雅夫は、目を輝かせ信念を持って言った。雅夫と共に紅玲の目も輝いている。
「グレッグ、分かったでしょう。だから、出ていって」
 紅玲は、得意気な表情でグレッグを見つめ言った。
 グレッグは圧倒されたのか、雅夫を数秒間見つめると、何も言わず、その場を立ち去った。
 雅夫と紅玲は、二人だけで廊下に立ちすくみ、しばらく見つめ合う。
「雅夫、帰国はとりやめたんでしょう。授業を始めるわよ」
「ああ、喜んで。すまない。何も言わず取り消してしまって」
「いいのよ。そのおかげで、私も吹っ切れた。そして、自分が何を感じているのかがはっきり分かったもの」
「今日は何の授業をするんだい?」
「我喜歓・・の使い方を習いましょう」
 紅玲は、雅夫の手を取り、教室へと導いていった。

終わり
作品名:北京2005 作家名:かいかた・まさし