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ユウキヒロ
ユウキヒロ
novelistID. 41813
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マリオとマリーと殺人計画

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「このロープで、奥さんのこと絞め殺してあげる。マリーちゃんは手伝わないけど、殺人の現場を見てみたいんだって」
 小林は頭がくらくらした。なんてバカなんだこいつらは。
「いや、松井、いいんだ。もういいんだ。あの時のおれはどうかしてた。殺人なんてバカな発想だった。もうそんなつもりは無い。友情には感謝するが、もういいんだ。やめてくれ松井」
 松井を止めた。彼はしゅんとしてロープを持った手を下ろした。しかし。
「小林、それでは私の気がすまない。もうすでに、殺人の現場を見てみたい好奇心でいっぱいなのだ。その責任を取れ小林。さあ行け太郎。小林妻を絞め殺せ」
 実の父を呼び捨てにしてマリーは指示を飛ばした。その指示を受け、俄然元気に松井は部屋の奥に突進しようとする。小林は体を張って止めたが、猪のようなものすごい突進に、焦った。
「美代子、美代子!逃げろ!美代子逃げてくれ!」
 松井の突進を押さえながら、力の限り叫んだ。久しぶりに妻の名を呼んだな、修羅場のはずのその状況で、小林はそんなことを思った。夫の叫び声を受けて、妻は部屋から出て来た。玄関に来てみると、夫と見知らぬ太った男が相撲を取っていた。妻は、久しぶりに夫の前で、笑った。


エピローグ

 しぶしぶといった表情で引き上げて行くバカ親子の背中を見送り、小林は部屋で一息ついた。妻はすでに自室に引きこもっている。それにしても、自分が信じられなかった。身をていして、嫌悪しているはずの妻を、守ってしまった。
 ぼんやりと考える、なぜ自分たち夫婦の関係はここまで悪くなってしまったのだろうかと。全て妻のせいにしていた。自分は仕事を頑張っているのに、手抜きの家事。少ない俺のこづかいに対して、自分は友達と旅行に行くという。クラス会と言って外泊した日は怪しかった。
 では自分はどうか。仕事の忙しさにかまけて、果たして今まで家庭を省みることがあったか。結婚記念日や誕生日をいつから忘れてしまったのか。

 だが―――さすがにもうやり直しはきかないだろうな、と思う。妻もそうだろうし、小林自身そんな愛情は残っていない。しかし、この牢獄を終わりにすることならできるかも知れない。もちろん、殺人という手段に頼らずだ。今度、妻と話し合いの機会を作ろう。小林はそう思った。