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鏡像ロット

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最後


僕たちは、誰かの真似をして生きている。
僕たちは生まれおちて、しばらくは本能のままに生きる。
そして、目が見え始めると、傍にいる人間の真似をし始める。
顔の表情の作り方を真似て、
自然と頭に入ってくる言葉を、母の腹の中にいたときからきいていた音を思い出して、羅列を真似てみる。
上手に言えると誰か分からないが温かい人が褒めてくれるから、
それが『いいこと』なのだと学んで、もっと真似をする。
何かができるようになると、別のものを真似して、
それができるようになると、さらに別のものを真似てみる。
両親以外の人間に出会うようになると、その人たちからも少しずつ真似て、
徐々に、自分という周囲と区別された人間ができる。

これが演技なのかどうかは分からない。
自分でだって分からない。
そう、自分で分かるわけがないのだ。
だって、自分自身がすでに、所詮人の真似事なのだから。

時折、どこかで聞いたような台詞を吐く自分に気がついて、
自分が自分でなくなったような、胸が握りつぶされそうな感覚がする。
そんなとき、一人になりたくて部屋にこもる。
そうすると、誰にも邪魔されずに自分を見つめることができて、
自分が自分であったと、内心ほっとする。
けれど、それは違うのだ。
他人を真似してできた僕たちは、他人がいるとどこか自分とかぶってしまう。
だから、一人にならなければ自分を浮き彫りにできないだけなのだ。
それを悲しいと思うかどうかは、自分次第なのだけど。
作品名:鏡像ロット 作家名:こたつ