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十のちいさな 小さなものがたり 1~10

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1 決して、忘れない

                   
 その日の夜のニュースは、背筋を戦慄させ信じられない気持と、いつかは起こりうるであろうという予感が的中したおぞましさが入り混じっていた。なぜならそれ以前から、世界各地では墜落事故と、日本国内でも小さいといえるかどうかの事故が、頻繁に発生していたからである。

 1985年8月12日18時56分、日本航空123便は群馬県多野郡上野村高天原山系の名もなき尾根、それ以降通称となった御巣鷹の尾根に墜落した。
 生存者4名、死者520名(プラス胎児1名)という大惨事となったのである。
 
 羽田空港から伊丹空港へ向かう当便には、盆休みが重なり、帰省のビジネスマンや親戚を訪れる子供連れの家族、甲子園球場で開催されていた高校野球観戦を楽しみにしていた人たちなどで満席だった。
 なぜ墜落したのか、根本原因となるところは企業の隠ぺい体質と責任逃れから、なかなか明らかに出来なかった。現在でも満足できる調査結果を得られた、とはいえないそうである。
 ボーイング社における調査にも当初は難渋したようで、彼らにも責任の一端があると認めさせたのは、ある意味での成果であったのかもしれない。

 ノンフィクション作家の柳田邦夫氏が、さまざまな視点から調べ上げて出版した本に、分かりやすく詳述されている。
 山崎豊子氏作『沈まぬ太陽』第3巻は、御遺族たちとの信頼関係を築きながら直接面談して聞き取り、良く練り上げた作品であり、涙なくしては読めない。声を出して嗚咽しながら読んだ。
 私は伊丹空港の近くに住んでいる。日航の宿舎が近くにあり、当機に乗っていて死亡した3人家族(両親と5歳の男の子)が住む家は、近くにあった。彼らの御遺族である埼玉県にお住まいのおじい様もその本の中に登場し、会社とのやり取りや心情などを述べておられる。
 残された家族にも、それぞれにはそれぞれの人生があり、それは大きく狂わせられてしまった。だが、企業の取り扱いは十把一絡げであり、早く補償金の支払いを済ませて、終止符を打ちたかったのであろう。家族にとっても早く済ませてしまい、関わるのを絶ちたいと思われた方もいらしたようだ。