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天の階(きざはし)~蒼穹のかなたに見たものは~

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 と、龍五郎は手で自分の首をチョンチョンとつついた。暗に、下手に富松を庇い立てしては、自分の首が飛ぶと言っているのだった。
 確かに、龍五郎の言い分は道理である。キリシタンは幕府でも堅く禁じられている。もしキリシタンであることが露見すれば、磔や火刑の厳罰に処せられるのが習いであった。
 刹那、卯吉はガバとその場に土下座をしていた。
「頼む、この通りだ。何とかしてやってくれねえか。その富松って男は、ガキの時分から苦労ばっかりして良いことなんか一つもなくここまで来たんだ。それで、ついご禁制のキリシタンなんぞになっちまったんだ。とにかく良い奴なんだ。殺されちまうなんざあ、あんまりだぜ」
 畳に頭をこすりつける卯吉を、龍五郎はしばらく無表情にじっと眺めていたが、プッと吹き出した。
「お前ら、本当に似た者同士の夫婦だな」
 卯吉が顔を上げる。
 龍五郎は片頬を歪めた。それが龍五郎の笑い方だった。
「できるだけのことはする。だが、あんまり期待はしねえでくれ。それは最初に言っておくぜ。何しろ、難しすぎる話だ」
「判っている。恩に着る」
 卯吉は深々と頭を垂れた。