蒼空の向こう
重度の椎間板ヘルニア。
手術が最短の道だが、手術したからと言って完治の保障は出来ないと言われ、通院を選んだ。
週3回。脊椎への痛み止めの注射。電気治療、機械による牽引治療。
学校に行けない僕は、授業からどんどん遅れていく。
担任の先生が、僕のために特別授業を組んでくれたが、それでも間に合わなかった。
何よりも出席日数が足らなくなった。
間もなく夏休みに入ろうとした時、病院の帰りにアーケード側の公園に立ち寄った。
博物館が隣接していて、その中に吸い込まれるように入った。ポスターが目に留まった。
・・・・・「美大受験ためのデッサン教室」・・・・・
僕は迷わず受付に問い合わせて受講を申し込んだ。
お金が足らなかったが、後日でいいからと言われ、申込用紙だけ書いた。
帰りのフェリー。
デッキで遠くを見ていた。
博物館に入った時に、自分が見えた気がした。
やりたい事が判った気がした。
医大の次にお金が掛かる美大なんて、とうてい行けない。
「行かせてくれ」なんて言えない。
働いて・・・金を貯めて・・・いつか、アメリカに・・・ニューヨークに渡ろう。
そう自分に誓った。
夏の空。
あの日と同じだった。