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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 重度の椎間板ヘルニア。
 手術が最短の道だが、手術したからと言って完治の保障は出来ないと言われ、通院を選んだ。
 週3回。脊椎への痛み止めの注射。電気治療、機械による牽引治療。

 学校に行けない僕は、授業からどんどん遅れていく。
 担任の先生が、僕のために特別授業を組んでくれたが、それでも間に合わなかった。
 何よりも出席日数が足らなくなった。

 間もなく夏休みに入ろうとした時、病院の帰りにアーケード側の公園に立ち寄った。
 博物館が隣接していて、その中に吸い込まれるように入った。ポスターが目に留まった。
 ・・・・・「美大受験ためのデッサン教室」・・・・・
 僕は迷わず受付に問い合わせて受講を申し込んだ。
 お金が足らなかったが、後日でいいからと言われ、申込用紙だけ書いた。

 帰りのフェリー。
 デッキで遠くを見ていた。
 博物館に入った時に、自分が見えた気がした。
 やりたい事が判った気がした。

 医大の次にお金が掛かる美大なんて、とうてい行けない。
 「行かせてくれ」なんて言えない。

 働いて・・・金を貯めて・・・いつか、アメリカに・・・ニューヨークに渡ろう。
 そう自分に誓った。

 夏の空。

 あの日と同じだった。
 
作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ