蒼空の向こう
僕は答えに窮した。何も言えずに更に木炭を塗りこんだ。
「・・・何をしているの?梅雨川君」
クラスメイトは作業を止めて僕と先生のやり取りを凝視している。
「・・・・シーザーを描いています」
「描いていますって・・・真っ黒じゃないですか」
「・・・・・・・これからです」
僕は木炭を置いて「練りゴム」(デッサン用の消しゴム)を取り上げると、塗りこんだ木炭を消していった。
「・・・そうか!逆転の発想ね。消しゴムで描くのか〜!面白いわね・・・楽しみ!」
授業が終わる頃には、真っ黒な画面に白いシーザーの胸像が出来上がっていた。
先生はしきりに僕の「崖っぷち描法」を褒め称えた。
職員室でも吹聴したらしくホームルームの後、担任の先生から呼ばれた。
「梅雨川・・・職員室までいいか?」
「・・・はい」
職員室のドアを開けると、担任と一緒に美術のS先生、そして陸上部顧問のH先生がいた。遠巻きに他の先生達も傍観している。僕が描いた絵が壁に貼られていた。
「梅雨川。お前、頭も良けりゃ、足も早い。ハハハッ・・・絵も上手いなぁ!」
「いえ・・・そんなでは・・・」