蒼空の向こう
顔から火が・・・そう言って、年甲斐もなく赤面する良子は、再び膝をすり合わせ、耳たぶまで赤く染めていた。
突然、企画室のドアが開き、末永が袋を抱いて入ってきた。
「先生!・・・買って来たよ、ボジョレー!」
ボジョレー・ヌーボーは、フルーティさが良いのだろうが、僕はしっかりした味わいのボルドーワインを好む。
僕は、ワイングラスに注がれた貧弱な色合いを眺めながら、良子の手作り料理を口に運んだ。
相手がワインという事を意識したのだろう。サーモンのマリネ。
5ミリ程に切り揃えたモツァレラチーズとトマトに、特製のドレッシングを掛け、バジルの葉まで添えてあった。しかし、流石に日本人だなと感じたのが、俵巻きのオニギリが用意されていた事だった。
それはそれで、気配りのある、そして、恋人として、女として充分に合格点が取れる人だと思った。
僕は、ふと野本麻美の事を思い浮かべ、良子と重ね合わせてみたが、重なるものは感じなかった。
「さて・・・先生、お願いしますよ」
末永は、ボジョレーを一気に飲むと、僕に笑顔を向け、そのジャック・ニコルソン似の恐ろしい目で睨んできた。
笑顔なのだが目が怖い。その奇異な表情に、彼の人生も現れているような気がした。
「聞いてもつまらないよ・・・」
「いや・・・そんな事はない。絶対に無い」



