「舞台裏の仲間たち」(12)
「石川さん、餃子を用意しましたが・・・大丈夫ですか?。」
時絵ママの顔だけが、厨房から振りかえりました。
問われた意味が理解できません。
やがて徳利を手にした時絵ママが、笑顔で戻ってきました
「お帰りを待っているご婦人などがいらっしゃいますと
餃子のニンニク臭で失礼に当たります。
そういう意味で、お尋ねをしました。
座長が大好物ですので、そこの大将軒から買ってまいりました。
私も座長も、独身ですので何の不具合はありませんが、
石川さんはどうですか、
本当に不具合などは、ありませんか?」
「僕も、餃子は大好物です、
同じく独身ですので、幸か不幸か、不具合などは一切ありません。」
「あらまぁ、独身でしたっけ・・・
うっかりしておりました、私の大きな勘違いですね。
でもまぁそれは、ようございました。
では、3人の独身が
早く、良縁などに恵まれることをお願いして
あらためて乾杯とうにとまいりましょう、
皆さま、ご唱和をよろしく。」
それっきり座長との会話は止まってしまいました。
もうすこし語ろうとしながらも、あえて最後に呑みこ込んでしまった
座長の言葉がなんとなく、余韻として私の頭の中へは響いてきました。
「茜をしあわせにしてやってくれよ、頼むぜ、男なら・・・」
ロマンチストの座長なら、きっと、そんな風に、(もうすこし時間があったなら)
言いきったのかもしれません。
(13)へつづく
作品名:「舞台裏の仲間たち」(12) 作家名:落合順平