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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第五話

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「うむ・・・摩訶不思議なことを申すのう。まあ良い。幼い頃、家中に仕えておったかえでと申す同い年ぐらいの娘に瓜二つの顔をそなたはしておったのじゃ。
かえでは十五の時に流行り病で死んだ。ずっと仲良くしておったから悲しくてのう・・・その時の顔が忘れられないんじゃ。
市で赤子の泣く方をみて、そなたの顔を見たときは驚かされた。すぐに後ろに下がって行かれたので、村長に尋ねて探してもらった。
こんな事で呼びつけて済まぬがひと時話が出来れば気持ちも収まるであろう。後に褒美を取らせるので付き合ってくれ」

「そのようなことがございましたのですね。私の母親はこの地方の出身と聞いております。何度か母に連れられて尋ねたことがありました。明智村を存じていたのはそのためです」

「おお!そうであったか。では遠い親戚かも知れぬのう・・・なんと言う偶然じゃ!南無阿弥陀仏・・・」

光秀は仏教を信奉していた。信長が勧めるキリスト教への信仰は日本を滅ぼす危険な行為だと感じていた。

「光秀様、まどかは娘の藤子のことが気がかりです。ご用向きが済まないようでしたら、一旦帰らせていただき改めて伺いとうございます。いけませんか?」

「そうか、母親とはそう思うものであったのう。すまぬ、供の者に送らせるゆえ市まで戻られよ」

「ありがとうございます。光秀様のご武運を祈っております」

「そなたも赤子を良い子に育てられよ。縁があれば坂本城に尋ねてこられよ。光秀今日の事は忘れぬぞ」

「藤子が大きくなりましたら琵琶湖見物を兼ねて伺いとうございます」

「おお、そうか。それは楽しみに待っているぞ。必ず尋ねられよ。そうじゃ、これはその時に門番に見せよ。家紋入りの扇子じゃ。光秀に会いに来たと見せれば、快く通してくれようぞ」

「はい、大切に持っております」

まどかは丁寧に押し頂いて懐に仕舞った。そしてじっと光秀の顔をしばらく見ていた。
この人が歴史の時間に習った明智光秀。本能寺の変で信長を討った人物なんだとしみじみ感じていた。