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ちぎれた世界にて

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第1章 思い出づくり



「ジャ〜〜〜ン!!!」

 そのいかにもテンションが高そうな男子高校生は、4枚あるチケットを見せびらかしていた……。

 そこは共学の公立高校の教室で、彼が自慢気に見せびらかしている相手は、同じクラスの1人の男子高校生と2人の女子高校生なのだ。その他の生徒たちも、チラチラと何事かと見ていたが、すぐにそれぞれ自分たちのことに戻っていく。
 今は昼休みで、大学受験を間近に控えているにも関わらず、教室は騒がしかった。どこかの馬鹿が最強設定にしたエアコンから出るゴーゴーという音さえも、教室の喧騒に掻き消されているほどである。一方、教室の窓の外はとても暑そうで、野球部などが校庭で、このクソ暑さの中で必死に練習をしていた。

「なになに? 『小笠原諸島の秘密の島で、最先端技術を学ぼう!!!』?」
クールな男子高校生が、怪訝そうな目つきでチケットを見ながら言う。
「昨日、そこの商店街の福引をやったらよ。なんと、特等の豪華旅行が当たっちゃったわけ! ちょうど4人分だったから、いっしょに行こうぜ!」
見せびらかしている男子高校生はニヤニヤしながら言った。
「変な旅行じゃないわよね? 店で高い物を買わされる的なやつ?」
少し勝気な感じの女子高校生が言う。彼女も怪訝そうな目つきだ。
「大丈夫さ!!! 文部科学省が主催している旅行だぜ」
「ふーん。なら、少しはマシね」
「でも、秘密の島ってなんなのかな?」
勝気な女子高校生の隣りにいる女子高校生が言った。彼女は控えめな感じで、お人好しっぽい雰囲気だ。
「行ってみてのお楽しみだから、秘密の島なんだろ?」
「そっか。う…寒い」
彼女が納得したそのとき、エアコンから吹く強い冷風が、彼女の頭を直撃した。彼女の長いストレートの黒髪が、風でなびく。
「ちょっと! そこで寝ている奴、クーラー弱くして!」
勝気女子が、前のエアコンの操作パネルの近くの席で寝ているぼっちの男子に命令した……。
 ぼっち男子は、やれやれといった感じで起きると、エアコンを操作して、冷房を弱めた。すると、DQNの男子に「なに弱くしてんだよ!!!」とか怒鳴られ、絡まれ始めていた……。

「もうすぐ受検なのよ?」
勝気女子が、ぼっち男子がDQN男子に絡まれていることなど、まったく気にしていない様子で言った……。
「たった1週間なんだから、別にいいだろ? 息抜きだよ息抜き!!!」
ハイテンションの男子がそう言うと、他の3人は苦笑いしながら、旅行に行くことに同意した。どうやら、『高校生活最後の夏休み』での貴重な思い出作りの魅力には勝てなかったようだ。

 旅行を心待ちにする彼らの後ろで、ぼっち男子が、DQN男子に飛び蹴りを喰らわされていた……。勝気な女子だけでなく、教室にいた全員が、見て見ぬふりを決めこんでいる……。
 あっ、ジャストミート。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん