夢の運び人 15
自分と同じくらいの年齢の女の子が描いたとは、とても思えなかったのだ。しかも、これを描いた女の子は盲目である。
好奇心に身を任せてページをめくる。
今度描かれていたのは大きな観覧車だった。細かい部分は分からないのか、運び人が想像する観覧車とは少し違う。
絵の下には、『遊園地に行きたい』と書かれていた。
夢の運び人が次のページに移ろうとした時、ベッドで眠る少女が寝返りをうったのを感じて、運び人は机を離れた。
「ばい……ばい」
目覚めそうな少女の顔を伺いながら運び人は掠れた声で別れを告げる。
少女が目を覚ました時には、すでに夢の運び人の姿や気配はなかった。
いつもと変わらない暗闇の世界で身を起こした少女は、誰かを探すように部屋を見渡す。
「夢……だったのかな」
誰の気配も感じられない静かな部屋に、少女の残念そうな声が響いた。
その夜、茶色い表紙のノートには、男の子と盲目の女の子が描かれる事となる。月明かりの中で、向かい合う二人は微笑み、手を繋いでいた。