ハリーの憂鬱
話を戻そう。
田口さんと約束した日曜日。
僕はハイジを連れて出社した。
午前十一時。会社正面の駐車場に、見慣れない車が滑り込んで来た。
これもまた、見慣れないご夫婦が・・・・。田口さんだろう。
僕は慌てて、玄関のドアを開けた。
「田口さんですか?」
「あ、はい・・・お仕事中にすみません」
「構いませんよ・・・どうぞ・・・ハイジも来てますよ」
僕は玄関のドアを支えて夫妻を案内した。
ハイジとの対面。
僕は静かに見守った。
「うあぁ〜〜可愛いなぁ〜」
「まぁ・・・ハイジちゃん。かわいい!」
ハイジは自分の名前を呼ばれて、シッポをワサワサと振った。
ご主人は遠慮がちに近づくと、腰を落とした。
これもまた、遠慮がちにハイジに触れる。
ハイジは立ち上がると、ご主人に前足を差し出した。
その前足を、ご主人は受け止め・・・・。
「ハイジ・・・・うちに来てくれるかい?」
全てが決着した。
決着したと思ったが、僕はあえて問いただした。