メディカル・ヒストリー・ツアー
どうやら他の家族もフランス宮廷晩餐会には興味があるらしく、だれからも文句は出なかった。
こうして一組の客は更に足取りも軽くMHTレストランから出て行ったのである。
「あ~あ、全く羨ましい限りだ。あんな、ぺレットを成型したものを本物の肉と信じられるなんて――。今じゃこんな料金では、まともな食材なんか手に入らない事くらい、考えれば分かるだろうに。ヘッドギアを取ったってクスリは抜けないし、食事室は部屋全体がヘッドギアみたいなもんだからな」
だれにも聞こえないようにつぶやくと支配人は深いため息をついた。
「あ~、オレもこの仕事に就くまでは満干全席に憧れていたのだが……」
全てを知っている支配人にはMHT社の最新マシンでも騙し通すことは不可能なのだった……。
おわり
作品名:メディカル・ヒストリー・ツアー 作家名:郷田三郎(G3)