メディカル・ヒストリー・ツアー
もともとMHTのサービスは完全にプログラム化・マニュアル化された歴史ツアーであった。
歴史というのはある程度誰の中にも似た様なイメージがあって、商品化し易いらしいのだ。
そこで、ヴァーチャルリアリティの中を散策するだけでなく、当時そこで食べられていた食事までも体験できるというところが、普段は人口配合飼料しか食べられない現代人に爆発的な人気を博したのだ。
勿論、人口配合飼料というのはスラングであり、本来は只のペレットという名称で、一人一人の体格や体質、そして従事する仕事の内容によって配布量が定められている。
栄養的にはそれだけでも生きては行けるが、人間とはそれだけで生きられるものではなく、法律が制定された当初は、自殺者や食料強盗などが相次ぎ社会問題にまでなったのだ。
そして週に2回だけ国が指定したレストランで+αの料金を払って食事ができる、通称『レストラン法』が制定されたのである。
つまりちゃんとレストランという商売も成り立っているわけだ。
そして、MHTのレストランでは、フランス王侯貴族の晩餐会に行ったり、中国で満干全席を食べたり、シャーウッドの森でロビンフッドのバーベキューが食べられたりできる。
中でも現在、人気ナンバーワンなのは、ジュラシック・アドベンチャーの中で食べられるコンプソグナトスの丸焼きである。
(※コンプソグナトスは白亜紀に生息したと言われるニワトリ程の大きさの肉食恐竜)
作品名:メディカル・ヒストリー・ツアー 作家名:郷田三郎(G3)