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アグネシア戦記【一巻-三章】

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ケイオスはそう自身の髪を撫で自己紹介をした。ウィプルの住民は名前が長いらしい。

「あたしはフリルです」

フリルは立ち上がり握手を求めるとケイオスは快く手を握り返した。

「宜しく」

手を離したフリルは再び席を着くと、ケイオスは再び頬杖をついた。

「して、フリル殿…この度我が村随一の実力者であるマリアを倒し、ここまで来た目的をお聞きしましょうか」


ケイオスはマリアに目線を送り、それから再びフリルに戻す。フリルは今までの経緯をケイオスに伝えた。
「成る程、魔王の討伐のため…我々に力を借りたいと?」

全てを聞いたケイオスは眉をひそめてといた。

「…はい」

フリルは正直に頷いた。

「ふむ…」

聞いた村長は立ち上がり手を叩く。すると奥の部屋から小さな女の子を抱いた女性が現れた。

「紹介しよう、妻の【リネ・トール・キャネディ】と長いのでリネットと呼んで下さい、それと娘の【リーネ・トール・キャネディ】と【リト】だ」

村長の妻、リネットはリトをおろしてこちらに頭を下げた。

「よろしくお願いします」
フリルは席を立ち頭を下げた。

「結果は急ぎですか?」

ケイオスに言われればフリルは顔を背ける。

「出来れば…」

控えめに呟くと、ケイオスは苦笑しため息を吐いた。
「わかりました、本日は我が家でお泊まり下さい…今夜、結果をお話しします」

そうしてフリルは村長の家に泊まる事となった。

夜、夕食を終えたフリルはケイオスに誘われ、ベランダに招かれた。ベランダには小さな椅子が二つとテーブルが一つあり、上には歪な形をしたビンとコップが二つあった。

「座りたまえ…」

ケイオスは頬杖を付いてフリルを睨む。その双眼は、魔法使い達を統べる長にふさわしい凄みがあった。

「わかりました」

フリルは頷き、ケイオスの前にある席に座った。

「結論から言おう」

ケイオスはフリルの目を真っ直ぐに見据えた。

「アグネシアに魔法使いは出さない…」

フリルは奥歯を噛み締め俯く。が、ケイオスはアグネシアと言っていた。フリルは再び顔を上げてケイオスをみた。するとケイオスは柔らかい笑顔になる。

「うん、でも君の仲間になら安心して出せるよ…」
フリルはケイオスを真っ直ぐ見据え席を立つ。

「ケイオスさん!」

ケイオスはそんなフリルを見てその堅物な表情を崩して笑わせる。

「座りたまえ、わたしとて魔王を野ざらしにしておくつもりはない。しかし魔法使いは喧嘩が弱いからな…」

そんなジョークにフリルはクスクスと控えめに笑い肩を揺らす。

「何人が希望かな?」

フリルはケイオスを真っ直ぐに見据える。

「一人、飛びきり腕の立つ」

ケイオスはそれを聞いてフリルの言いたい事がわかり肩を揺らす。

「マリアかい?」

フリルは芯を突かれギョッとした。

「そ!そんなこと…」

「君の反応を見ればわかる」

ケイオスは肩をすくめて再び頬杖を着いた。

「あいつは、いい加減外を見た方がいい…何も知らなくて困っていたんだよ」

ケイオスはマリアを厄介者の様に言っていた。

「本当にマリアだけでいいのかい?」

その言葉を受けフリルは笑い、自身たっぷりに胸を張る。

「勿論です!」

それを聞いた村長は大いに笑うと立ち上がり瓶のコルクを抜いた。

「一杯如何かな?騎士殿」
それに対してフリルは首を傾げる。

「お酒ですか?」

「安心したまえ、君の体型にあわせた飲み物さ…ブラックチェリーのね?」

それを聞いたフリルはグラスを手に取りケイオスにより。黒い色をしたジュースが並々にそそがれ、そこで二人はグラスを合わせた。

「今日、あらたな友人との出会いに…」

「乾杯」

それは静かな夜だった―。