アグネシア戦記【一巻-二章】
翌日、フリル・フロルはネビル・アグネシア城の尋問室にいた。目の前には尋問官がおり、フリルは大人しく席に座り尋問官を見上げている。
「この4日間…貴様は、何処で何をしていたのだ?」
すると尋問官は見下す様に吐き捨て、フリルはため息を吐きながら不満いっぱいの表情で尋問官を見上げた。
「1日一つの布陣を壊滅させてた…それで信じる?」
ドン!!尋問官がフリルの返答を聞くなり机を叩いて身を乗り出してフリルの顔を思い切り睨み付けた。
「嘘を言うな!!なら貴様の連れてきたあの魔王軍の男!!あれはなんだ!!」
「ラルフの事?、彼はこれから聖騎士団として戦場に出て共に戦ってくれる優秀な仲間よ〜♪仲良くしてねっ」
フリルはそう愛敬たっぷりにウィンクまでしてやると。付き合うのが馬鹿馬鹿しいとおもい、机に足を投げ出して椅子に寝そべるような体勢で頭の後ろに腕を組んだ。
「優秀な仲間よ〜仲良くしてね…出来るかっ!敵の罠かもしれないのだぞ!?そもそも貴様は本当に敵の陣地を襲撃したのか!?」
確かに彼の言い分も分かる、編成されたての部隊のフリルが、まるでわかっていたかのように四つの陣営を壊滅させ、さらには魔王軍でも腕利きの兵士であるラルフを連れてきたのだから、魔王軍に手引きしているのではないかと疑われても仕方がない…しかも、よく見れば彼はグリフォードが所属していた軍の将だ、彼を引き抜かれた事で部隊にもっとも武勲を持ち込む人間を失ったのだ…それの腹いせでもあるのかもしれない。
「襲撃してきたってなんども言ったじゃない…なら確かめて来たら?なんなら場所までエスコートして差し上げますよ〜?」
そこまでバカにされるとその将は顔を真っ赤に染めてから机に乗せられたフリルの両足を手で払いのけ、再び机を叩いた。
「ふざっけるな!子供のお使いじゃないんだぞ!?貴様のような小娘にそんな事が出来るものか嘘に決まってる!!大人をバカにするのもいい加減にしろっ!!」
「はあ…やれやれ…」
これ以上話す事は無かった…ならどうする?。。。答えは簡単だった。フリルは突然立ち上がると、その右手で尋問官の顔面を鷲掴みにした。
「ぎゃあああ!!!…」
握力で握り締める。それだけで尋問官の顔の骨はミシミシ悲鳴を挙げた。
「大人しく席に着いていたあたしがバカだったわ…」
ドン!!――扉がひとりでに開いた。否、尋問官が扉ごと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた――が正しい答えだった。
「ひゅ〜…やるねぇ。うちの隊長さん、敵も味方もお構い無しだな」
ラルフ・ブラッドマンはグリフォード・ロベルトと共に外で待っていた。そもそも事の発端は彼が敵軍を裏切りこちらに側に着いた事が信用をされなかった原因になる。
「ラルフ?貴方も隊長がああなった原因の一つなんですから…」
「わかってんよ、あまちゃんが」
おちゃらけるラルフをグリフォードが制止する。しかしラルフはご機嫌にそれをながし、不満で頬を膨らませたまま尋問室から出てきたフリルに手を振る。
「貴様!こんなことをして……絶対後悔させてやるからな!!」
顔がフリルの手形に腫れた将はそんなことを泣きながらに叫んでいた。
「や〜、悪いわね…お偉いさんが堅くてさ〜…」
フリルはそんな将の叫びをまるっきり無視してケロっとした表情に戻ると、グリフォードと手を振るラルフを見つけて手を振り反した。するとグリフォードはやれやれと肩をすくめ、ラルフは下品に笑って振っていた手を止める。
「じゃあ行きましょうか、エリオール様に次の活動を報告をしなくちゃね」
そう言ってフリルは歳相応のはしゃぐような仕草で二人の間をを通り過ぎて通路を歩いていけば、二人はフリルの後ろにつき従う…しばらくアグネシア城の長い長い廊下を進み、たどり着いた場所はエリオール王子の私室である。フリルはノックもせずに開け放ち中に入ると膝を折り、ラルフとグリフォードも同様に膝を折る。
「聖騎士団三名、参上しました」
エリオールはフリルが来るのがわかっていたかのように落ち着いた様子で穏やかな表情を浮かべる。
「フリル、早速やらかしてくれたみたいだね…」
「エリオール様、確り伝えてくれたんですか〜?、上の方々は怒り心頭でしたよ?」
フリルは片膝をついたままその容姿に似つかわしくない肩をトントンと叩く仕草をした。
「したさ、しかしわたしの権限などその程度だという事さ」
実際悔しいのだろう、エリオールは穏やかな表情を崩さずに、握りこぶしをつくって震わせている。
「君がラルフ・ブラッドマンですね?。噂は聞いていますよ」
エリオールに目を向けられたラルフは顔を反らし、『こいつも同じか』と思った。ラルフは上官や王族という連中が嫌いだった、偉いというだけでそれが武器になると勘違いしているような人間が多かったからだ…が、しかしエリオールはラルフの思惑とは違い、肩に手を置いて膝をつく。
「その様子だとフリルにこっぴどくやられたようだね、投げられて顔面を強打したってところかな?」
エリオールはそんな風にラルフの頬に貼られたガーゼに触れる、ラルフは目を丸くして見つめ。
「だー!気持ちわりい!!なんだよお前は!俺はそっちの趣味はねえ!!」
片膝を崩して激しく身震いしながら後退りする。
「いやいや、わたしも抱くなら女の子がいいよ?…」
エリオールは穏やかに笑いながらチラリとフリルの顔を見つめて少し悲しげな顔をすると首を横に振った。
「まあ、ゲノム王国の勤務は厳しいからね、怪我で足を引っ張らないようにしてくれよ?」
今までこんな王族はいなかった、ラルフはイライラも半分に改めて実感する。ここは普通ではないと…。エリオールは全員を見回してから扉をしめた。
「皆、楽にくつろいでくれ。フリル、現状を聞きたい」
エリオールは穏やかな笑顔のまま凛々しくそういい、ベッドに腰掛けた。フリル達は立ち上がり、用意された椅子に腰掛ける。
「状況は思った以上に良くありません。これはあたしの予想ですが…先日壊滅させた4つは布石に過ぎません、後ろに大きな本陣があると思います。ちがう?ラルフ」
フリルは冷静に、淡々とそう告げ、ラルフにその場にいた全員の視線が集中する唯一敵の情勢を知っていたラルフはあまりの感の鋭さに思わず口笛を吹いた。
「すっげえな〜…あんた」
ラルフは背もたれに体重を掛けて改めて降参したように苦笑を浮かべた。
「では、フリルの言っている事は当たっているのかい?…」
エリオールの問いかけにラルフは頷く。
「ああ、あんたらが潰した四つは布石と言うよりは偵察の陣営だ、その後ろには本陣じゃあ無いがアグネシアの情報を逐一伝える一万単位の兵力を持ったでけえ布陣がある、1日ずつ伝令が来なくなったからな…不審に思ったから俺が来たってわけさ」
ラルフはお手上げと言いたげに肩をすくめてグリフォードに目を向ける。
「では、隊長はそれを見越した上で毎回夜を狙って?」
グリフォードはフリルに顔を向けるとフリルは自信満々な様子で頷く。
「この4日間…貴様は、何処で何をしていたのだ?」
すると尋問官は見下す様に吐き捨て、フリルはため息を吐きながら不満いっぱいの表情で尋問官を見上げた。
「1日一つの布陣を壊滅させてた…それで信じる?」
ドン!!尋問官がフリルの返答を聞くなり机を叩いて身を乗り出してフリルの顔を思い切り睨み付けた。
「嘘を言うな!!なら貴様の連れてきたあの魔王軍の男!!あれはなんだ!!」
「ラルフの事?、彼はこれから聖騎士団として戦場に出て共に戦ってくれる優秀な仲間よ〜♪仲良くしてねっ」
フリルはそう愛敬たっぷりにウィンクまでしてやると。付き合うのが馬鹿馬鹿しいとおもい、机に足を投げ出して椅子に寝そべるような体勢で頭の後ろに腕を組んだ。
「優秀な仲間よ〜仲良くしてね…出来るかっ!敵の罠かもしれないのだぞ!?そもそも貴様は本当に敵の陣地を襲撃したのか!?」
確かに彼の言い分も分かる、編成されたての部隊のフリルが、まるでわかっていたかのように四つの陣営を壊滅させ、さらには魔王軍でも腕利きの兵士であるラルフを連れてきたのだから、魔王軍に手引きしているのではないかと疑われても仕方がない…しかも、よく見れば彼はグリフォードが所属していた軍の将だ、彼を引き抜かれた事で部隊にもっとも武勲を持ち込む人間を失ったのだ…それの腹いせでもあるのかもしれない。
「襲撃してきたってなんども言ったじゃない…なら確かめて来たら?なんなら場所までエスコートして差し上げますよ〜?」
そこまでバカにされるとその将は顔を真っ赤に染めてから机に乗せられたフリルの両足を手で払いのけ、再び机を叩いた。
「ふざっけるな!子供のお使いじゃないんだぞ!?貴様のような小娘にそんな事が出来るものか嘘に決まってる!!大人をバカにするのもいい加減にしろっ!!」
「はあ…やれやれ…」
これ以上話す事は無かった…ならどうする?。。。答えは簡単だった。フリルは突然立ち上がると、その右手で尋問官の顔面を鷲掴みにした。
「ぎゃあああ!!!…」
握力で握り締める。それだけで尋問官の顔の骨はミシミシ悲鳴を挙げた。
「大人しく席に着いていたあたしがバカだったわ…」
ドン!!――扉がひとりでに開いた。否、尋問官が扉ごと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた――が正しい答えだった。
「ひゅ〜…やるねぇ。うちの隊長さん、敵も味方もお構い無しだな」
ラルフ・ブラッドマンはグリフォード・ロベルトと共に外で待っていた。そもそも事の発端は彼が敵軍を裏切りこちらに側に着いた事が信用をされなかった原因になる。
「ラルフ?貴方も隊長がああなった原因の一つなんですから…」
「わかってんよ、あまちゃんが」
おちゃらけるラルフをグリフォードが制止する。しかしラルフはご機嫌にそれをながし、不満で頬を膨らませたまま尋問室から出てきたフリルに手を振る。
「貴様!こんなことをして……絶対後悔させてやるからな!!」
顔がフリルの手形に腫れた将はそんなことを泣きながらに叫んでいた。
「や〜、悪いわね…お偉いさんが堅くてさ〜…」
フリルはそんな将の叫びをまるっきり無視してケロっとした表情に戻ると、グリフォードと手を振るラルフを見つけて手を振り反した。するとグリフォードはやれやれと肩をすくめ、ラルフは下品に笑って振っていた手を止める。
「じゃあ行きましょうか、エリオール様に次の活動を報告をしなくちゃね」
そう言ってフリルは歳相応のはしゃぐような仕草で二人の間をを通り過ぎて通路を歩いていけば、二人はフリルの後ろにつき従う…しばらくアグネシア城の長い長い廊下を進み、たどり着いた場所はエリオール王子の私室である。フリルはノックもせずに開け放ち中に入ると膝を折り、ラルフとグリフォードも同様に膝を折る。
「聖騎士団三名、参上しました」
エリオールはフリルが来るのがわかっていたかのように落ち着いた様子で穏やかな表情を浮かべる。
「フリル、早速やらかしてくれたみたいだね…」
「エリオール様、確り伝えてくれたんですか〜?、上の方々は怒り心頭でしたよ?」
フリルは片膝をついたままその容姿に似つかわしくない肩をトントンと叩く仕草をした。
「したさ、しかしわたしの権限などその程度だという事さ」
実際悔しいのだろう、エリオールは穏やかな表情を崩さずに、握りこぶしをつくって震わせている。
「君がラルフ・ブラッドマンですね?。噂は聞いていますよ」
エリオールに目を向けられたラルフは顔を反らし、『こいつも同じか』と思った。ラルフは上官や王族という連中が嫌いだった、偉いというだけでそれが武器になると勘違いしているような人間が多かったからだ…が、しかしエリオールはラルフの思惑とは違い、肩に手を置いて膝をつく。
「その様子だとフリルにこっぴどくやられたようだね、投げられて顔面を強打したってところかな?」
エリオールはそんな風にラルフの頬に貼られたガーゼに触れる、ラルフは目を丸くして見つめ。
「だー!気持ちわりい!!なんだよお前は!俺はそっちの趣味はねえ!!」
片膝を崩して激しく身震いしながら後退りする。
「いやいや、わたしも抱くなら女の子がいいよ?…」
エリオールは穏やかに笑いながらチラリとフリルの顔を見つめて少し悲しげな顔をすると首を横に振った。
「まあ、ゲノム王国の勤務は厳しいからね、怪我で足を引っ張らないようにしてくれよ?」
今までこんな王族はいなかった、ラルフはイライラも半分に改めて実感する。ここは普通ではないと…。エリオールは全員を見回してから扉をしめた。
「皆、楽にくつろいでくれ。フリル、現状を聞きたい」
エリオールは穏やかな笑顔のまま凛々しくそういい、ベッドに腰掛けた。フリル達は立ち上がり、用意された椅子に腰掛ける。
「状況は思った以上に良くありません。これはあたしの予想ですが…先日壊滅させた4つは布石に過ぎません、後ろに大きな本陣があると思います。ちがう?ラルフ」
フリルは冷静に、淡々とそう告げ、ラルフにその場にいた全員の視線が集中する唯一敵の情勢を知っていたラルフはあまりの感の鋭さに思わず口笛を吹いた。
「すっげえな〜…あんた」
ラルフは背もたれに体重を掛けて改めて降参したように苦笑を浮かべた。
「では、フリルの言っている事は当たっているのかい?…」
エリオールの問いかけにラルフは頷く。
「ああ、あんたらが潰した四つは布石と言うよりは偵察の陣営だ、その後ろには本陣じゃあ無いがアグネシアの情報を逐一伝える一万単位の兵力を持ったでけえ布陣がある、1日ずつ伝令が来なくなったからな…不審に思ったから俺が来たってわけさ」
ラルフはお手上げと言いたげに肩をすくめてグリフォードに目を向ける。
「では、隊長はそれを見越した上で毎回夜を狙って?」
グリフォードはフリルに顔を向けるとフリルは自信満々な様子で頷く。
作品名:アグネシア戦記【一巻-二章】 作家名:黒兎