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アグネシア戦記【一巻-序章】

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外にでたグリフォードは驚愕する。そこにはフリルの姿があった…月の光に照らされ、手にはこの陣営の大将の物とされる首。その姿をグリフォードは美しいと感じてしまっていた。

「グリフォード、着替えなさい」

フリルは大将の頭を地面に投げ捨て、脇に抱えたものを差し出した。それは魔王軍の服と鎧だった。

「貴方の思惑が…分かりました…」

フリルの思惑に気付いたグリフォードはニヤリと笑い、敵兵士の鎧を手に取る。

「あと3つね…これなら3日でかたがつくわ〜」

グリフォードは大きく頷くと、フリルはいつものように頭の後ろに手を組んだ。
「あ、そろそろ伝令が帰ってくるから、やっちゃっといて〜」

そうして今気付いたようにいいながらフラフラと行ってしまう。次の日の夜そしてその次の夜…2つの陣営が知らない間に壊滅した。
そして、それは最後の陣営での出来事だった―フリルとグリフォードはここ数日の繰り返しのごとく大将を討ち取り、アグネシアへの帰路につこうとしていた。

「まちな…」

突然呼び止められグリフォードは素早く感じ取り振り替えると、そこには屶のような形をした大きな小太刀を手にした褐色の筋肉質な青年がそこにいた、服装はオーバーオールに上からベストを羽織り、頭には鉄の額当てを着けている。

「よお!グリフォード」

少年はグリフォードを見るなり実に楽しそうにニヤケ、グリフォードの方はいやな汗を流がした。

「ラルフ・ブラッドマン」

フリルは一度ラルフを見てから、グリフォードに顔を向けた。

「あ〜、あいつ知り合い?」

呑気なフリルを横目にグリフォードは緊張したまま大きく頷く。

「やっぱりてめ〜か!…三つの陣営から連絡が途絶えたからもしやと思って来てみたら、このざまかよ…んま、良く見破ったな?褒めてやんよ?」

フリルを一瞥したラルフは拍手までしだした。フリルはというと。

「ねえねえ、あいつどんな奴?」

グリフォードの服をグイグイと引いて聞いてくる、やむを得ずグリフォードはフリルに顔を向ける。

「彼はラルフ・ブラッドマン、魔王軍で唯一単騎を好む武人です…」

それを聞いたフリルは此れ程とない笑みを浮かべた。

「おいグリフォード、そいつは彼女かい?相変わらず洒落た奴だぜ…気に入らねぇ…」


置いてきぼりにされたラルフはフリルとグリフォードを何度も見回してグリフォードに対する怒りのボルテージがあがっていき構えをつくる。

「隊長!、ここはわたしに…」

フリルはグリフォードに任せて頷いた。

「あいつ、聖騎士団に欲しいわ」

グリフォードは制止し、剣を取り落とす。

「えと…え〜…ええ!!?」

グリフォードは激しく動揺して声を張り上げる。

「なにしてんだ奴ら…」

ラルフから見れば彼氏彼女が和気あいあいとしているようにも見え、一気にボルテージが上昇し爆発するや、左足を強く踏み込んで飛び上がると。それと同時に右に逆手で握り締めた小太刀もろとも振り下ろす。

「隊長!」

回し蹴りを後ろに引いて避けながらも右足強く踏み込み、同時に曲刀を上から振り下ろせば音速の斬撃がラルフの頭上から襲い掛かる。
「だからてめえは気にいらねえ!!人が話してるってのに!!女とイチャイチャしてんじゃ!!ねえぞっ!!コラァ!!」

音速の斬撃を額当てに当てて受けとめ、左足に纏ったままの赤い爆裂のレイブンをグリフォードの足元へたたき落とす。

「つ…!」


グリフォードは素早く足を引きつけ身を引く…しかしそれでは遅すぎた。

【ドン!!】―紅蓮の爆裂が地面から炸裂し、グリフォードの身体を空高くはねあげた。

「30回もテメエと立ち会ってりゃ!!!嫌でもわかるってんだよおお!!」

小太刀が赤く煌めき、三度地面に突き刺せば地面が真っ赤に染め上がる。

【紅蓮爆裂翔!!】

強大な爆炎が跳ね上がり、灼熱の業火がグリフォード目がけて襲い掛かる。

「隊長、すみません…こんなにも…早く…」

もはやこれまで、そうグリフォードは決意を決めて目を閉じた。

「ならないよ?」

強大な爆発を吹き飛ばす空間の弾丸…それと同時に飛び込んできたフリルがグリフォードの服を掴んで引き、引かれたグリフォードはそのまま放り投げられて地面に沈む。

「選手交代〜♪」

そうして前に出てきたフリルは、身体を伸ばしていた。ラルフはその一瞬の内に起こった出来事に目を丸くした。

「テメエ…邪魔すんじゃねえ〜!!」

それよりもついに仕留める事ができそうだったグリフォードを手前で取られた憎しみがさらなる怒りの爆発を生む、その爆発は地面を砕き空へと巻き上げて炎を撒き散らしながら弾丸の様なスピードで一気にフリルへと迫ってくる。

「はいはい!こっちでちゅ〜」

対したフリルはいたって焦る仕草も見せずに両足を肩幅に開いて腰をおとしながら両手を胸の前に構える。

「しぃいいねやああ!!」

突っ込んだラルフ。しかし触れたのはフリルの両手…左手がラルフの腹を下から押し上げ、右手がその首の後ろを軽く押す。こうすることでラルフは方向を失い、結果的には…

ドン!―と弾ける激しい轟音と共にラルフの身体は地面に激しく叩きつけられていた。

「必殺…呼吸投げ…っと」
しかしラルフは即座に起き上がり、血塗れの顔面を拭う事無くフリルに飛び掛かる。

「てんめぇえ!!!」

しかしラルフはフリルの身体に触れる前に再び腕を取られ、一瞬だけ担ぎ上げるような姿勢…そしてそのまま宙を舞い、地面に背中を叩きつけられる。

「ぐへあ!!」

背中を強くうちつけられ、息も出来ない程の苦しさにのた打ち回る。フリルはそんなラルフの顔を覗き込み、不適な笑いを浮かべたまま一言告げた。

「ねえあんた、あたしと一緒に来ない?」

差し出された少女の小さな手…ラルフは突然の事に頭が真っ白になり思考が停止してしまった、しかし其処には邪念など一つもない。ラルフは思ってしまった『この少女は、俺の力を心から欲している』と。その時、ラルフの手はフリルの手を握り締めていた。孤高の戦士ラルフ・ブラッドマンはこの時死を迎え、今、聖騎士団ラルフ・ブラッドマンとして蘇ったのであった。

朝、気を失っていたグリフォードが目を開けると、その顔をラルフが覗いていた。

「ラルフ・ブラッドマン!!」

グリフォードは素早く起き上がり剣を抜き放とうとするが、ラルフは手をヒラヒラと振り背を向ける。

「テメエに背を預けるには役不足だけどな…」

ラルフを見ればラルフも所々血塗れであり、小太刀は鞘に入れたままであった。
「何故…貴様が?」

ラルフはつまらなそうにグリフォードの問い掛けに応える。

「ん?…俺も、おまえの飼い主に引き抜かれた…それだけさ、宜しくな迅雷」

それだけでグリフォードは理解して俯く。

「ええ…宜しくお願いします、ふふ…かないませんね…あの人には」

グリフォードの皮肉にラルフも笑う。

「気が合うな…俺もそうおもったとこだぜ」

ラルフとグリフォードがそんな会話をしていると、フリルが駈けてきた。

「お〜い二人〜!いつまでねてんの〜?一旦国に帰るわよ〜!!」

フリルは大声で手を振り、二人は顔を見合せた。