DESTINY BREAKER 一章 2
これといって不機嫌な顔をした覚えのない桜花は夏樹に問い返した。
「不機嫌とかじゃないけど、なんか降ることが当たり前ぇみたいな顔だったよ。さては桜花ちゃん《雪が降ること知ってたでしょ》。」
「・・・・・・・えっ。」
心臓を鷲掴みにされたような感覚が桜花を刺激する。
《何か言わないと》
桜花の心が焦りだす
「そ、そんなこと知ってるわけ―――。」
桜花が言い掛けたとき
「あ〜あ、私の観た天気予報は外ればかりだなぁ。桜花ちゃんはこの情報何処で手に入れたの?私にも教えて欲しいな〜。」
「えっ?あっ、天気予報ね。そうね、天気予報・・・よね。」
「?」
夏樹は桜花が何故『天気予報』という言葉を唱え一人で納得しているのか不思議そうな顔をしている。
「えっと、違うのよナツ。朝、空を見ていたら今日は降りそうだなあって思ってたの。私、その、なんとなく、雪が降るって。」
「そうなんだぁ残念。折角、的中率の高い天気予報が見付かったと思ったのに。でも、もし知っちゃってたら嬉しくないよね。やっぱり、こういうのは知らないほうが嬉しさも二倍だよね。」
その言葉を聞き桜花は少し悲しそうに笑った。
「どうしたの桜花ちゃん?」
「ううん、何でもないの。雪・・・きれいだね。」
「うん。」
降り注ぐ雪はしだいに堆積し、地面の上に白い絨毯を敷き詰めていく。
二人は窓際に並んで寒さを気にせず外の景色を眺めていた。
ふと、横に並ぶ友人の笑顔を確認し、桜花の胸に色のない感情が浮き沈む。
この感情を喜びと評することは難い。
「―――教えてくれたとおりだったよ。」
誰にも聞こえないような抑揚のない小さい声で桜花は囁いた。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 2 作家名:翡翠翠