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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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ひとつだけやりのこしたこと

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だけどな、いま、もしかしたら、知らない方がよかったのかとさえ思うよ。

え、なぜ?

なくした時の悲しみが大きすぎるんだよ。それなしにいられなくなるんだよ。ほかの楽しみでは満足できなくなるんだよ。

依存症か?

何とでも言え。

しかしな、それならいまからほかの相手を探せばいいだろ。それとも赤い糸で最初からただ一人としか結ばれていない、と思うのか?

それは信じていない。だけどな、相性というものもあるし、最高の相手がそんなに簡単に見つかるはずないだろ?見つかったって、俺を愛してくれるかどうかわからないだろ?っていうか、そもそも62歳の貧乏百姓とつきあおうとする女性さえほとんどいないだろ。

でも、もしいたらまたはじめるんだな、性懲りもなく。

・・・・いや、少し、懲りている。たとえその相手と深く愛し合っても、また壊れるんじゃないか、と不安になるかも知れない。なりそうな気がする。あと、もう一つ不安がある。

まだあるのか。

さとみと比べるかも知れない。そしてさとみの方がよかった、さとみが恋しい、と・・・

おまえ、心底、やっかいな奴だな。つきあってられねえ。「そのうち何かいいことあるかも」って気楽に生きることがどうしてできねえんだよ。


傷ついたことのない人にはわからない。考えてみてくれよ。全力をかけたことが失われて、永遠に続くと信じたことがあっけなく壊れて・・・

泣き言を言うな。聞きたくないね。弱虫の言いぐさだ。

うん。弱虫かも知れない。俺、自分がこんなに傷つきやすいことを知らなかったからな。いつまでも引きずるなんて知らなかった。つくづく、どうしようもない人間だと思う。

いや、そこまで思わなくてもいいけど・・・

とにかく、このどうしようもない俺にとっては、ますます自信がなくなる出来事だったんだよ。これだけがんばってダメだったら、もう俺は何をやってもうまくいかないに違いない、一人ぼっちで泣きながら暮らして、一人ぼっちで死んでいくんだ。

・・・・・・・・・・おい。

死ぬ時にひとつだけ望みがある。幻覚の中であの日に戻ること。あのときのさとみの声を聞くこと。
「ねえ わたし
つださんのことが大好きなんだよ
ほんとうだよ

こんなに好きになったこと ないんだよ
こんなにしあわせになったこと ないんだよ」