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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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ひとつだけやりのこしたこと

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わたしは感動で目をみはる思いだった。あのさとみがここまで自分の意志をはっきり持って自分の足で歩こうとしている。つださんという支えもいらなくなった。新しいボーイフレンドにも頼らないし縛りあわない。


かつてわたしはこんなふうに書いた。

 さとみの抱えるトラウマに関連すると思われる症状はこのフラッシュバックのほかに
 1.ホットフラッシュ(体がのぼせる)、頭痛
 2.感情の乱高下
 3.自己嫌悪、自己評価の極端な低下、不安
 4.いつかつださんに捨てられる、という不安
 5.強い嫉妬
 がある。

それからこんなことも。

 さとみにお願いがあるの。
 さとみ。つださんに愛されようとしないで。つださんの好きな女性像に自分を合わせようとしないで。自分自身を生きて。


いま、すべての症状は消えた。わたしに合わせようとすることもやめた。自分自身を生き始めた。

治療は、いま、完了した。

蝶が生まれて初めて羽を広げるようにゆるやかに美しくさとみは飛び立とうとしている。わたしはそれに見とれている。

蝶も「渡り」をするって、知ってた?
あんなにかよわい羽で風に立ち向かって、海峡も、人間が作った国境も、越えて飛ぶんだよ。
途中で命を失う危険を冒してさえ。自分を生きるために。