ひとつだけやりのこしたこと
考えないことについての対話−2010秋 2010年10月31日
今日はねえ、明るく晴れてとてもさわやかな日だったよ。
こっち、もう3日も雨だよ。もう、ずっとこのままなのかな、って思うよ。二度と太陽なんて見られないんじゃないかな、って。やんなっちゃうよ。
は? おーい、梅雨時なら3日ぐらいの雨、しょっちょうでしょ。
うん。梅雨時のそんなときもいつもそんな気持ちになるの。でもね、晴れて太陽が出るとね、そんなこところっと忘れちゃうんだけどね。
・・・・・・・・・・・
さとみって単純だね。
うん!つださんも単純になれば楽なのにね。
え
考えるから苦しいんでしょ、自分のこと。
あ
難しく考えなけりゃいいじゃん。
・・・・・・・そうかも。
いま、うつでさ、何とかしなくちゃ、って、思って、そうするとますます自己嫌悪になる。なぜ乗り越えられないんだろう、他人ならいろいろ言えるのに自分のことになるとダメなの。
うん。わたしはうまくアドバイスできないからね。
でも、さとみに支えられていなかったらもっとひどいことになっていたに違いないよ。
でもねえ、さとみ。わたしから「一所懸命考える」ことをとったら何も残らないよ。たとえばさ、さとみと出会った時だって、さとみのフラッシュバックのこと、トラウマのこと、ネットであらためて深層心理のことを調べたりして、わたし、ずっとずっと考え続けたよ、どんなふうに「聴く」べきなのか、どんな「アドバイス」が症状を悪化させるのか。そしてそのことは間違っていなかったと思うよ、とっても未熟なカウンセリングだったけど。
そうだね。でも自分のことを考えると悪いループにはまるよね。
・・・・・・・うん。ひとのことなら何とかなるのに、自分のことはダメだ。そんなものなんだろうか。
じゃあさ、じゃあさ、わたしのことはさとみにまかせる、ということにする?わたしはそのときの悲しい感じや淋しい感じやいやな感じを全部さとみに伝えるから、あとはさとみがなぐさめたり、アドバイスしたり、そっとしておいてくれたり・・・・それでわたしはそのことについて何も考えないの。
うん。いいよ。それで行こう。逆の時もだよ。
もちろん。
簡単だね。
なんか、楽だね。
結局さ、二人なら何とかなる、ってことだね。あ、もちろん、ちゃんと愛し合っている二人なら、だけどね。
大丈夫なんだよ。つださんにはわたしがいるし、わたしにはつださんがいるんだから。
・・・・・・・ねえ。
なに?
さとみでよかった。出会ったのがさとみで、ほんとうによかった。わたし、ほんとうにラッキーだよ。
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ