ひとつだけやりのこしたこと
運命の赤い糸の存在に関する論争−2010夏 2010年08月27日 22時55分
ぜったい運命だよね。
運命?
わたしたち、出会うってずっと前から決まっていたんだよ。
えーっ、ちょっと待って。ずっと前って、いつなのよ。誰が決めたのよ。誰かが世界中の一人一人に、「うん、こいつはこいつとくっつけよう。」って、お節介おばさんみたいに?
えっとね、ちょっと違うの。生まれた時に赤い糸があってね、それが勝手に伸びていくの。どんどん伸びていって、わたしの糸はつださんの糸を見つけてぎゅってしたの。
糸が勝手に?SF映画みたい。あのさ、わたしの糸は生まれてからさとみが生まれるまで何をしていたの?ぼーっとしていたの?
そうなんじゃない?
おーい(^^;)
じゃあわたしたち、何でもっと早く、寄り道なんかしないで出会わなかったの?
あのとき出会うって、決まっていたのよ。つらいことがあって、そのあとしあわせになるって決まっていたのよ。じゃなきゃ、出会ってすぐにあんなにひかれあうはずないじゃない。
・・・・・・・・(困)
わたし、ネットなんてやったことなかったんだよ。あのちょっと前に事務のおばさんから「少し気を紛らわせたら?」って、趣味人のサイトを教えてもらって、最初は別のコミュに入ったけどね、そこは死に別れて一人になった人が多かったの。わたしとちょっと違うな、と思って、「おひとりさま」をちょっとのぞいてみたの。一番上にあったのがつださんのトピだったんだよ。一番上じゃなかったら気づかなかったよ。
そして思わずトピを立てちゃっんだよ。後にも先にもトピなんかたてたのあのときだけだよ。
ほんの少し前でも、ほんの少し後でも、わたしはつださんに出会わなかったと思うよ。
ね、偶然とは考えられないでしょ?
・・・・・・・・・・ふむ。
でも、つださんは運命、って嫌いだもんね。
うん。運命があるなら未来は決まっていることになるし、誰かそれを決めた人がいることになるし。
運命を信じないって、淋しいよね。
信じる方が淋しいよ。未来って決まっていないんだよ。いま、今日、わたしがすることが明日のわたしを作るんだから。わたしの明日を誰にも決めさせたくないよ、たとえ神様でも。
じゃあ、わたしと出会ったのも、ただの偶然?
うん。世の中って、けっこう不思議なことが起きるものなんだよ。でもね、こういうことは言えると思う。出会った時、二人とも泣いていたよね。
うん。
パートナーとの間がうまくいかない、って、人生そのものの失敗とも言えるよね、自信もなくなるよね。
うん。
でも、たぶん、わたしもさとみも、こころのもっと深いところでは願いを捨てなかったんだ。
願い?
ちゃんとそれぞれ相手を受け入れて相手のしあわせを願って、何でも言えて、許し合えて、そんな関係を作りたい、っていう願い。どこかにきっとそんな相手がいる、という望み。
わたしたちは二人とも、失敗の経験から学んできたんだよ。どうすれば関係が壊れるのか、学んできたんだよ。今度こそ失敗したくないから。
そうだね、今度は失敗したくない。それでね、つださんなら大丈夫って思ったのはね、すれ違ってもけんかしても、そのことについてちゃんと話し合えたから。
わたしもね、この人なら大丈夫、って思った。でも、ずっといい関係でいるためにはダメにならないように努力し続けようと思っているよ。前は何の努力もしなかったの。
わたしもね、いろんなことを変えていこうと思っている。
ね、だから、こんなふうにいまわたしたちがしあわせな関係なのは、ただの偶然じゃない。こころの深い場所での願いや意志の力、そういったものも働いているんだよ。
あのね。
なに。
そうなることもぜんぶ運命で決まっていたんだよ。
おいっ!!!どうしてもそっちに行くのか(怒)。運命を持ち出す必然性がないでしょ!!
ほんと、わたしたちって、意見が合わないね。
・・・・・・・・・・(汗)。
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ