ひとつだけやりのこしたこと
夜のお散歩 2009年09月19日 21時05分
わ こんなに暗いんだ
こんなの何年ぶりだろう
ってあなたがいうから
お散歩、いこ
闇の中に踏み出そうとしたら
やだ 怖い やっぱり無理
だめだったらすぐ帰るからちょっとだけ
あなたはわたしの腕にしがみついて
ようやく歩き始めたね
熟知した道 道幅もでこぼこも
足の裏が覚えている
降るような虫の声に包まれて
一歩ずつ
ずいぶんたって
星明かりでごくわずかに
足もとが見えた
ねえ 見えるよ 少し見える
短いキスをしたね
家の明かりがまぶしい
わあ 面白かった
ね 何も見えないと思っていても
慣れてくれば見えるでしょ
あと 一人で歩けない道でも
二人なら歩けるでしょ
ねえ
なに
また行こうね
夜のお散歩
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ