ひとつだけやりのこしたこと
電話 2009年06月25日 22時53分
ねえねえ、あのね、つださんはわたしのどこが好き?
全部!!
まじめに聞いてんですけど(怒)
あ
あのね、素直で率直で決して嘘をつかないところ。駆け引きとかしないでつださんをまっすぐ愛してくれるところ。あと、すごく可愛い。
ほんとかな。
え
えーっ
それじゃあ、なんですか、つださんはいい加減な嘘つきで、口から出任せのうまい事を言って、さとみをたぶらかして、からだをもてあそんで、そのうち飽きてぽいと捨てる、そういう男だという事ですか?
ううん、違うの違うの違うの、つださんは決して嘘をつかないって、知ってるよ、でもね、勘違いってあるでしょ。
・・・・・・
だって、つださん、わたしと出会った時、つき合っていた女の人を捨てたでしょ。
・・・・・・・(汗)
わたし、自己中だし、全然可愛くないし、だからね、いまはいいけど、ほかにつださんの前にすてきな女の人が現れたら、きっとつださんの心はそっちに行っちゃうんだろうな、ってどうしても考えちゃう。
・・・・・・。
あの、前の日記の「長崎空港送迎デッキ」、読んだよね、読んだ時どう思った?
なんか、可愛い女の人だなー、って、思ったよ。
・・・・・・・
あれ、全部さとみの言葉そのままだよ。少し前後を入れ替えたり、別の場所で聞いた言葉も入れたりしてあるけど、全部さとみが言ったんだよ。
そーなんだよねー。全部覚えてる。確かに言ってるよね、
でもね、文字に書かれたのを読むとね、全然別の人みたいに思えるの。なんでかなー。とても自分の事と思えないよ。
あのね、さとみ。
たぶんね、あの日記を読んだ人全員が、「なんて可愛いひとだろう。」と思ったと思うよ。読んだ男全員が、「一生に一度でいいからこんなふうに言われたい。」って、思ったと思うよ。あんなふうに言われてさとみを好きにならない男なんていないと思うよ。
さとみが自己中で可愛くないって言ったのは誰?
たかし。
でしょ。しかも30年間言われ続けたでしょ。たかし以外の人から言われた事は?
ない。
でしょ。だいいち、さとみは自分が自己中だってそう言っているよね、ほんとに自己中な人は決してそういわないでしょ、だから自己中なんでしょ。
たかしはそんなふうにさとみを非難し続けて、あげくに事業で作った膨大な借金をさとみに押しつけてどこかの女と逃げたでしょ。さとみは自分の性格が悪いから捨てられたんだと思い込んで泣き続けたよね、悪いところをなおすから帰ってきてほしいと泣き続けたよね。
うん。
それって、たかしの思うつぼだよね。
・・・・・・
つださんは今までさとみほどきれいなままの心を持った女性に会ったことがないよ。こんなに可愛いひと、いなかったよ。こんなにまっすぐに深く愛されたこともないよ。
それなのにさとみはいつも自分に自信がないよね。こんども捨てられるとびくびくしているよね。
無理もないよね。ついこの間、信じていたひとに裏切られたばかりだものね、本物の自己中の男から、「おまえの自己中に俺はずっと我慢してきたけど、もう我慢ができない。」って言われたんだからね。
・・・・・・うん・・・・・
あいつは自分を正当化するためにさとみを非難したんだよ、さとみに自分が悪いんだと思い込ませるためだよ、そしてそれは成功したんだよ。
・・・・・・そう、なのかな・・・・・
そうなの。
あのね、さとみ。
つださんはたかしじゃないよ。
さとみを捨てないよ。一生愛し続けるよ。
あのね、さとみ。
これはつださんの最後の恋なの。
もう二度と、ほかの女性を好きになんかならないの。誰ともつき合わないよ、さとみを傷つけないよ。
生まれて初めてそう誓える。だって、こんな気持ちになったのは初めてだもの。
離婚したことも、そのあとほかの女性とつき合ったことも、全部このための準備だったんじゃないかとさえ思えるよ。ほんとうの相手に出会って、ほんとうの恋をするための。
ねえねえ
さとみ
さとみ
さとみ
大好きだよ
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ