CHARLIE'S 23
チャーリーJr.は取り囲まれた。
ジリジリと間合いを詰められていく。
「やはり、一人では何も出来ないようだな・・・」
「へっ!・・・怖いか?・・・俺たちはファミリーなのさ!」
更に間合いが詰まる。
一気に襲われたら、一たまりも無い。
ダムダム団は、チャーリーJr.が唯の無鉄砲でバカなビーグルとしか思えなかった。当然、神経が緩む。
それとは反対に、チャーリーJr.は全ての筋肉に指令を出していた。間合い。動くべき方向。戦いを頭の中で組み立てている。
一匹のミックスが突進してきた。
チャーリーJr.は、一旦右へ交わすと、猛ダッシュで積み上げられたコンテナに向かって跳躍した。
太ももの血管は最大に膨らみ、5メーターはある垂直の壁を駆け上った。
「嘘だろうっ!・・・クソッ!・・・降りて来やがれ!」
チャーリーJr.は真上に昇った月に向かって吠えた。
「ウオォ〜〜〜ン!・・・ウォオ〜〜〜〜〜ン!」
ビーグルの声は「森の鈴」と呼ばれる程に太くて遠くまで届く。
澄み切った晩秋の摩天楼に、森の鈴が鳴り響いた。
「ウオォ〜〜〜ン!・・・ウォオ〜〜〜〜〜ン!」
「へへッ・・・遠吠えするしか能がないか・・・」
異変が起きた。
彼方此方のビルの影から、身を隠していた捨て犬たちが、その遠吠えに誘われるかの様に集まり出した。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ