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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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CHARLIE'S 23

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第1章・ブラックマンデー

一九二九年十月二四日。
アメリカ経済は未曾有の大パニックに陥った。
南北戦争に次ぐ悲劇と言われた金融危機、ブラックマンデー。

第一次大戦後、一九二〇年代のアメリカは「永遠の繁栄」と呼ばれる経済的好況を手に入れた。
だが、相次ぐ異常気象から農業恐慌が起こり、それに加えて鉄道や石炭産業部門も負の連鎖で大不振に陥った。
しかし、投機熱が冷める事はなく、逆に煽られた。欲に目が眩んだ人間の空踊りだ。
好景気によってだぶついた資金が市場に流れ、個人投資家も信用取引で容易に資金が出来たのが最悪の結果へと繋がる。
足元は既に崩壊しているのにも拘わらず、その空踊りは続けられ、ついに、バブルが崩壊した。
磐石だと思っていた橋が何時の間にか縄が解れたつり橋になっていたのだ。
気づいた時には遅かった。
人間達は次々に奈落の其処へと落ちていった。
人間の欲が招いた経済の終焉劇だった。

悲しいかな、そのとばっちりを飼い犬たちが喰らった。
郊外の戸建に住み、血統のある犬を飼う。それが成功のステータスとなっていたアメリカ。
ニューヨーク、マンハッタンでもそれは同じで、アパルトマンには、どの家庭にも血統書つきの犬が家族と言う名目で飼われていた。
だが、バブルが崩壊し、明日が見えなくなってしまった人間達は、犬達を郊外に連れて行き、置き去りにして帰った。

信頼して疑うことを知らない犬たちは、自分の立場すら飲み込めずにいた。
捨てられた犬たちは、帰巣本能を頼りに我が家を捜して彷徨った。
仮にたどり着けた犬がいたとしても、人間達にその余裕は無い。再び、郊外へ連れて行かれ・・・・捨てられた。
余りにも身勝手で・・・愚かで・・・悲しい現実が彼方此方で行われていた。

「ブラックマンデー」からひと月・・・今夜も捨てられた犬達の悲しい遠吠えが、マンハッタンに木霊した。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ