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短編読みきり小説~学業の秀でる人格障害と診断されました~

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「今後椎名さんは辛いけど、その調子の悪くなる場所で静かに二人だけでいろいろ話がしたいです。影を統合したいんです。今後も会いたいんです」
「いいわよ。あなたが必死に私の事を想ってくれるのはありがたいわ。でもずるいわよ。秀君の話も聞かせてよ。私も秀君の事癒したい。いいじゃない。AV女優になりかけた女と、勉強しかしたことのない男のカップルって。お似合いよ」
 私ははにかんだ。そして、私達は付き合う事にした。

 二人でいろいろ話をした。そして話した後、夜景の綺麗なレストランや、川が流れるのが見える店で話をした。不器用でも時間が解決した。

 ホテルに行って二人で抱き合った言葉で癒し、また身体で癒した。
「幸せになるのが怖い」さとみが言った。
「さまよったら愛し合えばいい。都会では愛は遭難船の星のようなものだ」私が言った。
「普通の人は愛の意味なんて考えないのにね。幸せに近づいているのに。なぜか涙が出てくる。なんでだろう?こんなに愛しているのに…うっ」
「僕たちだけの愛し方だ。いいんだよ。それでいいんだよ。大丈夫」

 バブルが崩壊し、平成の時代に生まれた。奇妙な生い立ちをした子供たちが、大人になって今こんなにも哀しい抱擁をしている。世界で一番悲しい交わり。私たちだけの愛情は私たちだけの秘密でもあった。秘密が一層愛を育んだ。

 私たちは付き合って2年で結婚し、5年の月日が経ち、外務省に働いていた私は、ワシントンDCに転勤になった。もちろん妻のさとみもアメリカへ連れて行った。アメリカの街になれるのに1年かかった。
 私はアメリカに来てから軽い抗うつ剤を飲みながら仕事をしている。

「ジャスミンティー入ったわよ。あなた最近疲れてるでしょ?」
「うん。休みの日は仕事のこと忘れようと思っているんだけどね。薬のせいもあって少し疲れやすいかな…」
「ねえ。最近外食してないじゃない。寿司バー連れてってよ」
「そうだな。日本食食べてないな最近」
私とさとみは窓の外を見た。私たちのマンションから公園が見える。

 金髪の女性がイヤホンを付け、ピッチリしたタイツでジョギングをし、老人はベンチに腰をかけ自然の木々を眺め、家族連れできた家族は芝生に座り子供は大きな犬とじゃれあっている。

 その時ひとりの男が若い女性に声をかけていた。初対面の女に声をかけているようだ。二人は気があって、近くのカフェに向かっていった。
「見て。あなた。若い頃の私たちがいる」さとみがそう言った。
 私はポツリとこう言った。
「愛は姿を隠して人を引合せるよ。特に大都会ではね」

                                   (完)