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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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Never see you

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Never see you




突き抜けたような青い空の中から、小さな黒い点が見える。
やがてそれは大きくなり飛行機の形だとわかる。
小さなジェットの音は爆音と共に巨大な塊となり目の前を通り過ぎた。
僕は送迎デッキから、久しぶりに再会する彼女の乗った飛行機を確認した。
約束の便は定刻より10分ほど遅れて、夏の陽ざしが照りつけるだだ広いコンクリートの滑走路に白い小さな煙をあげて着陸した。
あの小さな窓からは、僕は見えるのだろうか。Uターンして空港ビルに向かって来る飛行機を確認して、僕は到着口に向かった。
無事ランディングのアナウンスの館内放送が聞こえる。

乗降口の自動ドアから現れた彼女は「髪を切ったのよ」というメールのとおり、ショートカットをしていた。以前会った時の彼女よりは確かに短いかもしれないが、彼女は彼女のままだった。

「ひさしぶり・・」照れ笑いしながらはにかむ彼女も以前のままだった。



僕が彼女と会ったのはもう2年近く前になる。
当時、彼女は心に寂しさを抱えた、どこにでもいる冷え切った夫婦の妻をやっていた。
一人でいる僕の寂しさより、二人で同じ屋根の下で寂しさを抱えたまま暮らす仮面夫婦の方が何倍も寂しいのだろう。ひょんな事から僕達は知り合い、体の関係を持つ仲となってしまった。
その彼女との再会は「僕の住む街に来る」という約束から始まった。

「ひさしぶり、変わってないね・・」
僕は彼女の髪を一番に気にしながらも懐かしい顔に微笑んだ。
「・・・」照れ笑いで「ここまで来ちゃった」という顔をする彼女は、以前の疲れた妻役の頃より元気に見えた。白い肌と細い腕、もうすぐ50歳になろうとする彼女は年齢よりも5歳は若く見える。
僕はベッドの中でほんのりピンクになって恥じらいだ昔のあの時の彼女を思い出した。

「久しぶりの再会にここでキスしてあげたいけど人が多いからやめた」
僕の照れ隠しの言葉は、彼女の笑みを誘う。
「あら、遠慮しなくていいのに・・・」
「中年同士じゃ目立ちすぎるし、ここは僕の地元なんだ」
「以前より臆病になったのかしら・・・ふふっ」意地悪そうに笑う。

作品名:Never see you 作家名:海野ごはん