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ある日、少年は道を一人で歩いていた。
しかし、ただ歩いていた訳ではない。
彼は探していたのだ。


十数年間、この世界を歩き続けた。
ボロボロになった服に、磨り減った靴を履いた少年には
まだ、どこか幼さが残っている。



昔、彼は一人ではなかった。
たぶん、妹がいて、彼女は・・・確か少年が5歳の時、
街の火事で家と共に灰になった。
両親と過ごした記憶なんて、あっただろうか。
彼にとってはおぼろげな家族という名の記憶・・・。


しかし、一つだけ確かに残っているものがあった。




―――白い壁の白い部屋(はこ)・・・その床に散らばる砂。
    開いたままの窓から入るやまない風・・・・遠くに咲く・・・



彼自身、これが何なのかは理解できずにいた。
“記憶”ではなく、いつか見た“夢”の中の空想が、
彼の中で記憶と化したのか・・・



いつから彼は歩いているのだろう。
昼と夜さえ忘れてしまうほど。
思い出を振り返ることさえできなくなるほど。



作品名:no title 作家名:ライラ