舞台裏の仲間たち 8~9
気分が悪くなったのか、
急停止をさせた車から転げるようにして降りた茜は、
すぐ目の前に見える松林の中へ急ぎ足で
消えてしまいました。
前後を見回すと、すぐ反対側にバス停がありました。
その横へ車が2~3台置けそうな空き地が見えたので、そこへ車を止めてから
急いで茜の後を追いました。
海に面した防風林からは、
白い砂浜がどこまでも広がっていました。
茜がその白砂の彼方を歩いているのを見つけた瞬間に、
この寒さの中で、上着を車に残したままセーター姿で降りたことを、
瞬間的に、何故か思い出しました。
もう一度、茜が歩いている位置を再確認してから、車へと戻り、
茜の上着を持ち私も着込んでから、ゆっくりとまた
防風林へと向かいました。
防風林の松林を抜けると、
白い砂浜の先には、いきなり、鈍く光りながら
とてつもない広さを見せつける太平洋の大海原が、
ひらけてきました。
海から吹きつけてくる強い風には、
足元の砂粒まで飛ばしそうな勢いがこめられていました。
作品名:舞台裏の仲間たち 8~9 作家名:落合順平